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特集●情報化モデル企業のその後 〜その1〜

(株)エヅリコエンジニアリング
(株)小田島組


 

(株)エヅリコエンジニアリング

 (株)エヅリコエンジニアリングは、平成8年度に岩手県産業情報センター(当時)の情報化モデル企業育成事業を活用して多品種少量生産の生産管理システムの構築に取り組み、その後も改善に取り組んでいる。当時、当社は工作機械の完成組立から多種多様な部品加工への転換が軌道に乗り始めた時期であり、多種少量な部品加工をサポートする生産管理システムの構築は緊急の課題となっていた。                                     
 システムを導入して今年で3年目になる当社を訪ねて構築した生産管理システムに対する評価や今後の取組みについて話していただきました。構築した生産管理システムを使いこなそう、さらに高度な利用を追求しようとする貪欲な姿勢に感心させられた訪問でした

<企業概要>
代表者  代表取締役社長 菊池 公二郎 c01.jpg (20493 バイト)
所在地 岩手県北上市滑田20-111-1
従業員 男35名 女30名 合計65名
資本金 1,000万円
生産品目 各種機械部品の設計・製造

 

<企業沿革と情報化>

昭和60年 村精機(株)の子会社として和賀郡江釣子村に設立、CNC自動旋盤機の組立を始める。野村精機(株)への依存度100%。
 野村精機(株)が開発したソフトで資材調達管理を行う。
平成3年 野村精機(株)から分離独立の要請があり、独自の受注
活動を開始する。CNC自動旋盤機の組立のほか板金加工、塗装を追加した。
平成5年 事業内容の変化、取引先や生産部品数の増加で旧システムでの対応が困難となる。
平成7年 さらに取引先や生産部品数が増加し、生産管理システム再構築を痛感、事前準備を開始する。
平成8年 生産管理システムの開発を決定、開発業者を交えシステムの詳細を検討する。
平成9年 新しい生産管理システムが稼動、運用を開始する。
平成10年 菊池公二郎氏が代表取締役社長に就任する。品質保証に関する国際規格の認定・登録に向けて準備を開始する。



1.構築したシステムの概要

(1)多種多様な取引先、多種多様な受注内容にフィットした受注業務、製造業務、出荷業務を一貫してサポートできるシステム、納期、品質、コストを把握できるシステムとする。

(2)システムに求めた要件
1.得意先、協力会社をも含めた受注、製造、出荷の基幹業務を対象としたシステムとする。
2.パソコンによるLANシステムとし、分散入力、即時処理のシステムとする。
3.取引先のオンライン発注に対応できるシステムとする。
4.受注案件別に進捗状況を把握できるシステムとする。
5.製品のスループットタイム(段取り時間、加工時間、滞留時間)を把握できるシステムとする。
E失敗ロス(不良、手直し、作り直し)件数を把握できるシステムとする。
7.製品一個当たりの実績原価を把握できるシステムとする。

(3)サブシステム
構築した生産管理システムは次のサブシステムで構成されている。

1.受注管理システム
2.発注管理システム
3.製造指示システム
4.工程実績収集システム
5.納品・出荷管理システム
E在庫管理システム
7.原価管理システム
8.データ管理システム
9.マスタ保守システム

全体システムの概要
全体システムの概要

(4)システムに期待した効果
1.LANシステムであるため各所での分散即時入力、即時処理が可能で、スピーディーな業務遂行が図られる。
2.オンライン受注に対応できるため、受注データのエントリー(入力)作業の効率化が図られる。
3.在庫引当は有効在庫で行われるため二重引当の防止ができ、生産すすべき数量の確実性を高めることができる。
4.バーコードの利用で生産指示書単位で工程データのエントリーができるため納期管理の精度をあげることができる。
5.また、取引先に対する進捗報告がタイムリーにできる。納期の交渉、調整も正しく行える。
E工程への投入時間、加工着手時間、滞留時間、段取時間、加工時間、完了時間を把握することで製品の生産期間・通過時間(スループットタイム)を正しく把握することができる。
7.スループットタイムの把握により工程の改善点がハッキリし、目標を定めた改善活動が可能となる。
8.また、滞留状況により各能力と負荷のバランスを把握することで、きめ細かな外注管理が可能となる。
9.段取り時間、加工時間を把握することで原価管理、見積管理の精度が向上し、合理的な価格交渉が可能になる。
10.各工程では他工程の状況を知ることが出来る。情報の共有で全体最適化の取り組みが可能になる。

2.導入後のシステム改善

導入後のシステム改善は次の4つが行われている。
1.印刷時間の短縮のために高速高性能のプリンタを導入した。
2.作業指示書の発行に合わせて、加工上の留意点、安全や品質の急所を書いた製品カルテを出力できるようにした。
3.各工程の完了、停滞、不良などの状況は件数だけでなく金額でも把握できるようにした。
4.インターネットに接続、Eメールを使った納期回答、見積提出もできるようにした。

3.システムの導入効果

 当社ではシステムの導入効果として次のような点を上げている。総合的に見ると効果は作業面、管理面、営業面と広く及び、投資に見合う効果は上がっていると評価している。
1.オンライン化による入力作業の大幅な短縮が図られた。入力による残業は無くなった。
2.従業員が手書きで作業日報を作成する必要が無くなった。この分の間接作業は減少している。
3.単品別に進捗状況が把握できるため、きめ細かい納期対策が打てるようになった。納期調整や遅延件数 が減少した。
4.得意先からの進捗の問合わせ、確認に迅速に対応できるようになった。
5.作業データの分析が早くなり、従安全の急所が徹底した。不良が減少した。
7.受注残データを活用した先行的な営業活動が徹底した。
8.全社的結果、個人毎の仕事の結果を従業員フィードバックしている。この結果、従業員の意識が変わった。

4.今後の取組み

 当社では、作業と管理の一層の効率化を目指して次の取組みを上げている。いずれの取組みも現システムの高度利用及び若干の拡張で対応できる範囲のもので大きな費用をかけないで実行できると考えている。
(1)製品、工程別の工数管理と改善 システムから得られる製品別、工程別の工数データから材料・人・機械の関係のあり方を検討し工数を改善する。
(2)オンラインによる客先との図面交換 オンライン受注に加え図面交換も可能なシステムとし上流工程の効率化、客先との関係強化を進める。
 (中小企業診断士 高橋 正典)

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