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特集●情報化モデル企業のその後 〜その2〜

当情報研修センターでは平成8年度、4企業を対象に「情報化モデル企業育成事業」を実施し、その後の運用状況等を「情報化モデル企業のその後〜その1〜」として「情報いわて」平成11年10月号誌上にて2企業(株式会社エヅリコエンジニアリング様及び株式会社小田島組様)を紹介しました。
皆様の情報化推進の一助として参考にしていただくため、今回は「情報化モデル企業その後〜その2〜」として株式会社橋本工務店及び有限会社岩本電機製作所を紹介します。
(株)橋本工務店 (有)岩本電機製作所

(株)橋本工務店

 (株)橋本工務店は岩手県南の総合建設業者で、早くからOA化に積極的に取り組んでいた。平成8年度には岩手県産業情報センター(当時)の情報化モデル企業育成事業を活用し、既存のシステムを一新、業務の省力化・効率化の推進により中小企業の弱点である人材不足にも対処してきた。

<企業概要>
業種  建設業(総合建設業) 全景写真
代表者 代表取締役社長 橋本 健
所在地 岩手県東磐井郡千厩町千厩字岩間36-1
従業員 83名
資本金 8,000万円


1.再構築したシステムの概要
(1) 社員全員による情報の共有化と、現状把握、事務処理、管理業務、営業などすべての面において省力化・効率化を推進し、時短への対応および完工高の減少等に対応できるような社内体制を確立することを狙いとしてシステムを再構築した。
(2) 再構築したシステム等の概要は以下の通りである。
1. 旧LANシステムを撤去し、新規LANシステムを導入、サーバー用OSはWIN−NTに、クライアントPC用OSはWIN95に統一することにした。
2. 土木見積積算ソフトを購入、システム化した。
3. ファームバンキングを専用端末でなくPCで対応できるものに変更した。
4. 表計算ソフトをエクセルに変更し、それに伴ない社内研修会の開催、外部の研修会に参加するなど修得に努めた。

2.導入後のシステムの改善 
新規LANシステム導入後、今日までに追加・改善したシステム等は以下のとおりである。
1. サーバーマシンの入れ替え。(ペンティアム200MHZ→ペンティアムV400MZH)そして、旧サーバーマシンをクライアントPCに流用した。併せて、サーバー用OSをWIN−NT3.51から「BACK OFFICE SMALL BUSINESS SERVER 4.51(WIN−NTを含む)」に変更した。なお、クライアントPC用OSもすべてWIN98に変えた。
2. クライアントPC用として、デスクトップ型PCを1台追加。
3. 現場においてCAD用として使用するために、ノート型PCを1台購入。同時に、「AUTO CAD LT97」(建築CAD:提携メーカーのソフトを利用することにより見積も可能)購入し、インストール。
4. WIN98対応で、かつ全2重モデム対応のエレクトロニック・バンキング用ソフトを購入。
5. 会計・工事原価管理・経審用ソフトとして「建設奉行」を購入し、これに一本化した。併せて、「給与奉行」(給与計算/年末調整/社会保険関連処理)を購入。
6. 従来、FDにより郵送していた工事実績入力システム(コリンズ)をオンライン化。
7. MS−OFFICE2000を購入し、全クライアントPCにインストール。
以上の結果、現時点における新LANシステム等の構成機器は、次のようになった。(図1,参照)
(社内LANシステム構成機器)
 〇サーバー1台
 〇クライアント10台
 〇レーザープリンタ3台
 ●クライアントPC用のOSは、すべてWIN98
(現場用PC環境)
 〇デスクトップ型PC7台
 〇ノート型PC2台
 〇インクジェットプリンタ8台
 ●PC用OSは、WIN95とWIN98のいずれか

新LANシステム構成図 新LANシステム構成図 新LANシステム構成図
新LANシステム構成図 新LANシステム構成図 新LANシステム構成図
新LANシステム構成図 新LANシステム構成図 新LANシステム構成図

3.新LANシステムの導入効果 
システム改善後の効果も含めると、新システム導入により以下のような効果を発現させることができた。
1. 土木関係の見積積算が、土木工事経験者であれば誰でも短時間で効率的に行うことができるようになった。
2. 従来、事務所でしか出来なかった「設計・製図」、「測量関連処理」等をPCにより現場でも可能にし、生産性が向上した。これに関連してPCを駆使できる技術者(特に、若手)の成長が著しい。
3. 会計及び工事原価管理用ソフトの機能や操作性の向上により、正確かつ効率的に作業が出来るようになり、容易に有用な情報が得られるようになった。
また、給与計算ソフトでも、今まで手書き作成していた書類の大半(例えば、年末調整関係資料、社会保険関連事務など)をPCで出力することにより、手作業仕事が大幅に減少した。
 C「ワード」や「エクセル」等で作成した文書等のファイルを社員同士で容易に共有可能になり、作業効率がアップした。
 D銀行関連取引の大半がエレクトロニック・バンキングにより実行可能になり、取引の効率化が図られた。
 E今回のシステム化・情報化を推進した結果、上述のような直接的な効果以外に、社員全員の意識改革、すなわち効率性および生産性向上の追求およびコスト意識の高揚につながり、実質的にコストダウンと経費節減(例えば、資材等の調達方法の改善、残業時間の半減など)に結びつき、平成11年5月期では完成工事高が30%減少したにも拘わらず、増益にすることができた。

4.今後の課題 
(1) インターネット環境の構築
 現在は、会社業務にも部分的にインターネットを利用しているが、インターネット利用を前提とした建設CALSの運用開始時期を視野にいれながら、会社全体としてのインターネット環境を構築していきたい。
(2) 中高年対策
現場代理人約30名のうちの半数は、PCアレルギーをもち、無理してやらせると極めて非効率的になってしまうという問題があり、さらなる情報化推進のネックになっている。PCを使わなければ上達しない、かといって時間単価の高い社員が著しく非効率的にしか仕事ができないという状態は避けなければならないという問題がある。
(3) プロに近い人材の育成
 PCおよびインターネット等に専門的な知識・経験を有する人材を1〜2名育成して、簡単なトラブルであれば自社で迅速に対応できるようにしたい。
(4) 各種ソフトの活用と統一
 最近インストールした「OFFICE2000」や「SMALL BUSINESS SERVER」について学習し、有する機能を十分に生かし活用していきたい。 また、表計算ソフトについては「エクセル」に統一できたが、ワープロソフト(ワードか一太郎)やブラウザ(ネットスケープかエクスプローラ)については、全社的に統一できていないという問題が残っている。
(5) ISO9000への対応
 数年内にはISO9000の認定を取得しなければならないので、システム化・業務改善を進める中でISOを意識しつつ、まずは各種業務等のマニュアル化を進めていきたい。
(中小企業診断士 前田 忠彦)

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