0801 (1).gif (13286 バイト)

特集●平成10年求人実態調査結果


低下した企業求人比率 27.2%
来春の求人 さらに落ち込む見込み


 
 岩手県産業情報センターは、9月30日現在で県内中小企業を対象に求人動向調査を実施した。回収サンプル数は632企業である。
 これによると、今春の新卒者に対する求人企業比率は前年を大幅に下回り、県内の雇用情勢は長引く景気の低迷により雇用需要の減退が著しく、いっそう厳しさを増している。

 この調査は当産業情報センターが毎月実施している経営動向調査の対象企業62業種1,650企業に対し9月に調査を実施し分析したもので、回収サンプル数は、鉱業・建設業116、製造業220、卸売業61、小売業149、運輸業26、サービス業60、合計632社となっている。
 

求人企業比率27.2%、採用企業比率29.3%

 表1は業種別の求人状況を示している。これによると、今年の新卒者に対して求人のあった企業比率は、全体でみると、27.2%(前年調査38.6%)と前年を11.4ポイント大幅に下回った。求人数でも770人(同888人)と前年比△118人の減少となり、1企業当たりの求人数は、1.2人と前年調査の1.9人を下回った。
 これを業種別にみると、求人のあった企業比率は鉱業・建設業34.5%(前年調査55.0%)、製造業30.0%(同39.0%)、卸売業21.3%(同30.2%)、小売業21.5%(同38.2%)、運輸業11.5%(同16.7%)、サービス業30.0%(同35.3%)と全ての業種で前年を下回った。なかでも鉱業・建設業(前年比△20.5ポイント)、小売業(同△16.7ポイント)の落込みが目立っている。
 また、今春新卒採用者のあった企業比率は、全体でみると、29.3%(同36.9%)と前年を7.6ポイント下回った。新卒採用者数でも692人(同784人)と前年比△92人の減少となり、1企業当たり1.1人とここでも前年調査の1.7人を下回った。 
 さらに、今年4月から9月までの6ヵ月間に中途採用のあった企業比率でも、常用従業員37.0%(前年調査40.1%)、臨時従業員5.7%(同7.6%)といずれも前年を下回った。1企業当たりの採用者数では常用従業員が1.1人(同1.1人)、臨時従業員が0.2人(同0.3人)となり前年調査とほぼ同じ数値となった。
 一方、9年4月から10年9月までに離職者(定年や解雇、死亡等によらない任意の離職者)のあった企業比率は54.9%となった。業種別にみると、運輸業が73.1%と最も高く、次いで、鉱業・建設業が62.1%、製造業58.6%に順となっている。
 また、全体の充足率(採用者数÷求人数)は求人数、採用者数とも減少したため、89.9%(前年調査88.3%)となりほぼ横ばいとなった。業種別にみると、運輸業、サービス業で求人数を上回る高い充足率となっており、鉱業・建設業、小売業で90%台、卸売業80%台が製造業70%台となっている。
 長引く景気の低迷による業況の悪化を反映し、求人状況は全ての業種で減退が健著となっている。
 業種別に例年の傾向と今回の結果を比較すると、鉱業・建設業では、中途採用者の比率が高いのは例年どおりの傾向であるが、今回は離職者の比率も62.1%と高くなっている。製造業は、これまでも電気機械、一般機械、印刷で求人比率、離職者比率共に高かったが、今回も同様の傾向がみられる。運輸業では、例年同様、中途採用者、離職者とも比率が高い反面、新卒者の求人比率は全業種中最も低い数値となっている。

 

表1 業種別求人状況   (単位:人、%)
  項目   業種 1企業当たり従業員数 今春の新規学卒者 10/4〜10/9の中途採用者 9/4月〜10/9月の離職者
求人企業比率 求人数 採用者のあった企業比率 採用者数 充足率 常 用 臨 時 離職者のあった企業比率 離職者数
企業比率 採用者数 企業比率 採用者数
鉱 業・
 建 設
36.5 34.5 96 36.2 95 99.0 46.6 120 3.4 8 62.1 257
製 造 23.7 30.0 328 32.7 351 76.5 36.4 287 4.5 39 58.6 871
  食 品 58.3 20.0 57 16.0 24   46.0 138 6.0 17 50.0 223
  繊 維 69.4 35.3 23 47.1 11 58.8 21 - 0 88.2 97
  木 材 25.5 6.5 5 9.7 6 12.9 14 3.2 3 38.7 43
  建 具 4.0 - - 0.0 0 - 0 - 0 - 0
  印 刷 54.0 58.3 24 75.0 37 50.0 25 - 0 83.3 63
  窯 業 24.0 9.7 16 9.7 4 16.1 8 3.2 1 48.4 62
  鋳 物 49.5 50.0 8 50.0 8 83.3 7 16.6 1 50.0 19
  金 属 60.6 33.3 41 33.3 40 28.6 10 4.8 2 47.6 44
 一般機械 81.8 62.5 22 62.5 16 37.5 3 - 0 75.0 49
 電気機械 97.1 64.7 58 70.6 44 35.3 27 5.9 4 70.6 130
 輸送機械 77.6 50.0 43 58.3 39 50.0 13 8.3 9 83.3 56
 精密機械 58.9 50.0 31 58.3 22 50.0 21 8.3 2 91.7 85
卸 売 25.8 21.3 73 21.3 62 84.9 31.1 35 4.9 7 54.1 140
小 売 32.9 21.5 181 23.5 17.8 98.3 26.8 96 8.1 36 42.9 408
運 輸 78.6 11.5 16 11.5 17 106.3 76.9 109 7.7 44 73.1 140
サ−ビス 27.0 30.0 76 33.3 89 117.1 35.0 55 8.3 7 50.0 201
全業種 41.4 27.2 770 29.3 692 89.9 37.0 702 5.7 141 54.9 2,017

*充足率=採用者数÷求人数

 

離職者の年代別比率「20代」36.4%

 表2は経営者側からみた離職理由の内訳である。最も多かったのが「仕事が本人の性格にあわない」の60.5%(前年調査52.0%)と他を大きく引き離しており、以下は、「その他」27.7%(同22.2%)、「結婚、世帯主の転勤等本人の家庭の事情」27.4%(同51.1%)、「職場の人間関係がうまくいかない」23.3%(同20.8%)、「給料等待遇面の不満」15.0%(同13.1%)の順となっている。
 これを業種別にみると、全ての業種で「仕事が本人の………」が最も高いのは共通しているが、運輸業で「労働条件が厳しい」が、サービス業で「職場の人間関係………」がそれぞれ2位となっているのが目を引く。
  

表2 県内企業の離職状況 (単位:%)
業 種
項目
鉱業・建設 製造業 卸売業 小売業 運送業 サービス業 全業種
離職者のあった企業割合(9/4〜10/9) 62.1 58.6 54.1 429. 73.1 50.0 54.9
企業主からみた離職の理由 給料等待遇面の不満 8.3 13.8 12.5 15.4 18.8 16.7 15.0
労働条件が厳しい 6.9 5.4 0.0 1.5 38.9 13.3 6.9
仕事が本人の適正に合わない 62.5 59.2 53.1 58.5 66.7 70.0 60.5
職場の人間関係がうまくいかない 25.0 22.3 12.5 26.2 11.1 36.7 23.3
結婚、世帯主の転勤等家庭の事情 15.3 33.8 18.8 33.8 11.1 33.3 27.4
独立開業 4.2 4.6 6.3 10.8 0.0 13.3 6.3
その他 30.6 30.0 31.3 26.2 11.1 20.0 27.7
回答なし 1.4 0.8 3.1 1.5 0.0 0.0 1.2

*重複回答があるため合計は100%を越える
 


 次に、図1業種別年代別にみた離職者の比率である。全体では、例年のとおり、「20代」が36.4%と最も高く。次いで、「30代」と「50代」が16.9%の同率で並んでいる。また、「新卒者」と「10代」の若年層も合計で16.5%と相変わらず高い。
 業種別にみると、鉱業・建設業では、「50代」26.2%が「20代」26.6%と並んで高く、「新卒者」も12.7%と他の業種に比べて高くなっている。製造業では、「20代」が29.0%と高いものの各年代に分散している。卸売業では、「10代」の比率が12.5%と全業種中で最も高くなっている。小売業では、唯一「20代」が50.5%と5割を越えている。また、運輸業では、「20代」と「30代」で全体の約7割に達している。サービス業では、「20代」の比率が46.3%と全業種中で最も高くなっている。

図1 業種別、年代別離職者数


 

次ページへ