
特集●平成10年度金融借入実態調査結果
表2は、将来の事業資金の借入予定の有無、及び借入予定先についてみたものである。「近い将来借入をする予定がある」と答えた企業は全体で58.6%と、前回調査の55.3%を3.3ポイント上回った。
これを業種別にみると、建設業が68.2%、卸売業が62.1%、製造業が61.4%、運輸・サービス業が52.9%、小売業が50.6%となっている。借入先については、「銀行」が最も多く、以下「政府系金融機関」、「信用金庫・信用組合」、「県の制度融資」、「市町村の制度融資」、「その他」の順となっている。
業種別の特徴としては、全体を通じて実績と同じ形になっており、建設業では他の業種に比べて「信用金庫・信用組合」の割合が高く、逆に「政府系金融機関」の割合が低くなっている。製造業では「県の制度融資」の割合が高く、卸売業ではとりわけ「銀行」の割合が高くなっている。小売業では「政府系金融機関」の割合がもっとも高い。運輸・サービス業では「銀行」の割合が低く借入先にばらつきがみられる。
借入予定先/業種 |
全業種 |
建設業 |
製造業 |
卸売業 |
小売業 |
運輸・サービス業 |
銀行 |
296 |
78.9 |
(76.8) |
65 |
89.0 |
101 |
74.8 |
35 |
97.2 |
65 |
76.5 |
30 |
65.2 |
地元銀行 |
266 |
70.9 |
(67.3) |
58 |
79.5 |
91 |
67.4 |
32 |
88.9 |
57 |
67.1 |
28 |
60.9 |
地元銀行以外 |
30 |
8.0 |
(9.4) |
7 |
9.6 |
10 |
7.4 |
3 |
8.3 |
8 |
9.4 |
2 |
4.3 |
政府系金融機関 |
191 |
50.9 |
(46.9) |
24 |
32.9 |
72 |
53.3 |
15 |
41.7 |
53 |
62.4 |
27 |
58.7 |
信用金庫、信用組合 |
77 |
20.5 |
(18.4) |
20 |
27.4 |
26 |
19.3 |
5 |
13.9 |
18 |
21.2 |
8 |
17.4 |
県の制度融資 |
59 |
15.7 |
(10.7) |
12 |
16.4 |
27 |
20.0 |
3 |
8.3 |
12 |
14.1 |
5 |
10.9 |
市町村の制度融資 |
24 |
6.4 |
(3.8) |
5 |
6.8 |
8 |
5.9 |
0 |
- |
8 |
9.4 |
3 |
6.5 |
ノンバンク |
0 |
- |
- |
0 |
- |
0 |
- |
0 |
- |
0 |
- |
0 |
- |
その他 |
15 |
4.0 |
(4.3) |
1 |
1.4 |
8 |
5.9 |
2 |
5.6 |
3 |
3.5 |
1 |
2.2 |
借入予定有りと回答した企業数合計 |
375 |
58.6 |
(55.3) |
73 |
68.2 |
135 |
61.4 |
36 |
62.1 |
85 |
50.6 |
46 |
52.9 |
(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )内は前年度比率。
次に、図2−1、2−2は借入をする予定の事業資金のうち、設備資金と運転資金の使途(予定)についてみたものである。設備資金では、「機械・器具・什器・備品・車両の購入」が122件(44.7%)でトップ、以下「工場・店舗の設備、補修等」80件(29.3%)、「建物の取得」が35件(12.8%)、「土地の取得」が25件(9.2%)、「従業員福祉施設の設置」が6件(2.2%)となっている。
運転資金では、「買掛・手形の決済」が164件(28.7%)でトップ、以下「商品・原材料の仕入」が135件(23.6%)、「諸経費の支払、納税」が129件(22.6%)、「給与・賞与の支払」が111件(19.4%)、「旧債返済、肩代り資金」が30件(5.3%)となっている。

図2−1 資金使途(設備資金)<予定>
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図2−2 資金使途(運転資金)<予定>
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企業が借入する場合、信用面を補完する制度として岩手県信用保証協会の信用保証制度がある(平成10年12月末現在の保証債務残高3,508億円、前年同月比155.5%)。図3は信用保証協会に対する評価をみたものである。「利用したことがない」という企業も140件あったが、総じて信用保証制度については各企業に浸透していると思われる。また、例年調査と同様に「良い制度だと思う」、「機能が銀行と連動」、「銀行の窓口を広くしてくれる」等の良い評価が多い反面、「保証料が高い」、「審査が厳しい」、「貸付決定までの時間がかかりすぎる」などの意見も散見された。

図3 信用保証協会に対する評価
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図4は国・県・市町村などの公的制度融資についてみたものである。「利用したことがない」が179件で最も多く、企業側にはあまり浸透していないことがわかった。次いで「1件当りの貸付限度が低い」が156件、「融資条件が厳しい」が141件、「手続きがわずらわしい」が137件、「貸付期間が短い」が102件となっており全般的な融資条件の改善を望む意見も散見された。

図4 公的制度融資について
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図5は金融機関のいわゆる「貸し渋り」について聞いたものである。「現在はないが、今後あることが予想される」が285件(回答企業の44.5%)で最も多く、次いで「貸し渋りはないし、今後もないものと予想される」が173件(同27.0%)、「ある」が136件(同21.3%)、「その他」が46件(同7.2%)の順となっている。厳しい経営環境が続く県内景況にあって、金融機関に対する見方も慎重にならざるを得ない、という企業経営者側の胸のうちが察せられる。

図5 金融機関のいわゆる「貸し渋り」について
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