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特集●平成9年度下期県内法人企業設備投資計画調査結果
 

投資額 前年同期比2.2%減
弱まる借入依存度多様化する投資目的


 
 この調査は、当産業情報センターが岩手県商工労働部の委託を受けて半年ごとに実施しているもので、今回は平成9年度下期分(9年10月〜10年3月)にあたり、調査時点は1月6日現在である。
 調査対象企業は、建設業、製造業では従業員80人以上、卸売業、小売業、運輸業、サービス業は40人以上の主要法人企業500社。回収調査票から記入不備分を除いた回答企業数は212社で、有効回収率は42.4%だった。この業種別内訳は、建設業32社、製造業83社、卸売業21社、小売業30社、その他(運輸・サービス業)46社となっている。

 

投資額 前年同期比2.2%減

 表1は、回答のあった212企業の業種別設備投資動向(支払ベース)を示している。これによると平成9年度下期における設備投資計画の総額は195億4,885万円で、後退する県内景況を反映し前年同期実績比△2.2%の減少となった。一方、対前期比では25.6%の増加となっている。。
 業種別にみると、建設業では前年同期比△20.2%の減少となっている。これは、公共工事・住宅投資の減少から、下期にかけ売上が前年を下回ることを背景に、設備投資マインドの後退した企業が増加したためと思われる。
製造業業種によるバラツキがみられるものの、全体では前年同期比10.4%と好調な投資計画となっている。個別業種ごとにみると、前年同期比プラスとなったのは、化学、窯業・土石、出版・印刷、金属、機械、電気、精密である。このうち、化学は生産能力増大のための工場および機械・装置への大型投資が影響し前年同期比 81.8%の大幅な増加となった。金属も生産性向上のための機械装置への投資があり前年同期比96.9%の増加となった。また電気も前年同期比では3.8%増だが、通信関連を中心に先行投資に対する意欲が根強く高水準で推移している。精密、出版・印刷、窯業・土石は、サンプル数が少ないが、前年度投資が低調だったこともあり好調な投資計画となっている。 一方、前年同期比マイナスとなったのは、食料品、繊維、木材・木製品、パルプ・紙・紙加工、鉄鋼である。このうち、食料品は企業間によるバラツキはあるものの、前年度の工場新設等の反動減により、前年同期比△81.4%の減少となった。パルプは前年度において新規事業参入による大規模投資があったため、その反動減によりマイナスの伸び率となった。また、繊維、鉄鋼はサンプル数が少なく大半の企業が今期設備投資を控えたため、前年同期比マイナスとなった。
 卸売業では、車輌等の設備更新が殆どで目立った動きは見られず、前年同期比△9.6%の減少、前期比では6.4%の増加となっている。
 小売業では、競争激化に対応した店舗、営業所の新築・増改築、営業用土地取得等、一部積極的な投資もみられるが、低調な個人消費により今期の投資を見合わせる企業も多く、好調だった先期の反動減もあり、全体では前年同期比△39.2%と大幅な減少となっている。
 その他(運輸・サービス業)では、前年同期比△24.4%の減少となっている。運輸業では、恒常的な営業車両更新以外には特徴的な点はなく、必要最低限の投資に抑えられている。サービス業でも、ほとんどが設備更新等で、売上増加やコスト削減を図るための前向きな設備投資は少なく、好調だった前年度投資の反動減による影響が大きい。
 

表1 業種別設備投資動向     (単位:千円、%)

年度   8年度上期 8年度下期 9年度上期 9年度下期
業種 企業数 投資額 投資額 前期比 投資額 前期比 前年比 投資額 前期比 前年比
全産業 212 16,061,837 19,995,375 24.5 15,562,823 -22.2 -3.1 19,548,850 25.6 -2.2
建設業 32 1,023,372 1,627,847 59.1 857,142 -47.3 -16.2 1,299,467 51.6 -20.2
製造業 83 10,522,724 12,812,000 21.8 11,151,162 -13.0 6.0 14,143,396 26.8 10.4
食料品 14 396,471 1,023,908 158.3 898,320 -12.3 126.6 190,771 -78.8 -81.4
繊維 4 49,100 11,288 -77.0 31,176 176.2 -36.5 7,000 -77.5 -38.0
木材・木製品 6 562,307 194,772 -65.4 461,202 136.8 -18.0 164,057 -64.4 -15.8
パルプ・紙・紙加工 3 1,074,235 1,657,597 54.3 348,123 -79.0 -67.6 974,421 179.9 -41.2
化学 6 497,221 1,437,880 189.2 2,568,419 78.6 416.6 2,613,608 1.8 81.8
窯業・土石 6 2,943,002 2,434,394 -17.3 1,386,334 -43.1 -52.9 3,758,885 171.1 54.4
鉄鋼 3 17,794 13,089 -26.4 6,051 -53.8 -66.0 2,768 -54.3 -78.9
出版・印刷 4 315,986 84,233 -73.3 13,526 -83.9 -95.7 138,656 925.1 64.6
金属 8 128,590 86,877 -32.4 124,353 43.1 -3.3 171,050 37.6 96.9
機械 12 1,110,298 1,576,327 42.0 648503 -58.9 -41.6 1,637,912 152.6 3.9
電気 13 3,394,745 4,241,985 25.0 4,562,766 7.6 34.4 4,401,549 -3.5 3.8
精密 4 32,975 49,650 50.6 102,389 106.2 210.5 82,719 -19.2 66.6
卸・小売・他 97 4,515,741 5,555,528 23.0 3,554,519 -36.0 -21.3 4,105,987 15.5 -26.1
卸 売 21 396,479 536,125 35.2 189,390 -64.7 -52.2 643,146 239.6 20.0
小 売 30 549,602 2,254,361 310.2 1,535,583 -31.9 179.4 1,371,444 -10.7 -39.2
その他(運輸・サービス) 46 3,569,660 2,765,042 -22.5 1,829,546 -33.8 -48.7 2,091,397 14.3 -24.4

 

投資内容 業種によりバラツキ

 図1は、設備投資の内容についてみたものである。
 全業種では、「機械・装置」が59.2%(前年同期調査59.6%)、「建物」が25.0%(同23.6%)、「土地」が12.1%(同6.6%)、「構築物」が3.7%(同10.2%)の順となっておりほぼ前年と同様となっているが、土地の購入の割合が増加し構築物と入れ替わった点が特徴的である。
 業種別にみると、建設業では、前年4割近くを占めた「土地」が4.8%と大きく減少し、3割程だった「建物」が大幅に増加し約7割を占めた。 製造業では、「機械・装置」の占める割合が72.4%とほぼ前年並でトップ、不動産への投資割合は減少傾向にある。 卸売業では、「建物」の占める割合がやや減少し「土地」が2割を越えた。 小売業・その他(運輸・サービス業)も卸売業とほぼ同様の割合となっているが、「建物」の割合が高い点が特徴的である。
 

設備投資計画調査

 

借入依存度 建設業を除き弱まる

 次に、資金計画(設備投資資金の調達計画)についてみたのが図2である。全業種では、「借入金」が49.5%(前年同期調査57.0%)、「内部留保」46.3%(32.5%)、「その他」4.2%(同9.7%)、増資0.1%(同0.8%)の順となっており、前年同様の順となっているが、「借入金」への依存度が減少し5割を切り、内部留保が増加しほぼ半々となった点が近年になく特徴的である。
 業種別にその内訳をみると、建設業では、「借入金」の割合が前年度の26.5%から70.0%と大幅に増加し、その分内部留保が20.5%と減少した。 製造業では、「内部留保」の割合が54.9%と唯一5割を越えており借入依存度が最も低い。卸売業では「借入金」の依存度が昨年に比べて1割ほど減少したものの82.6%と全業種中もっとも高い。 小売業・その他(運輸・サービス業)は昨年とほぼ同様で「借入金」の依存度は約7割を占めている。
 

設備投資計画調査

 

設備投資計画調査 設備投資計画調査

 

多様化する投資目的

企業における設備投資の目的をみたのが図3(建設・製造業)と図4(非製造業)である。
 建設・製造業についてみると、「生産性向上」20.6%、「設備補修」18.5%、「生産力増大」16.9%と上位3項目は例年どおり変化がない。また「設備投資せず」も19.6%とほぼ前年同様の数値となった。
 非製造業でも、「売上高増大」17.4%、「店舗等補修」9.6%と、例年同様この2項目が上位を占めているが、「その他」の占める割合が高く投資目的は多様化する傾向にある。また、「設備投資せず」は37.4%と、前年同期の44.3%を下回った。

 

前年比売上は減少傾向

 最後に、回答企業における総売上高の実績と平成7年度上期の予想についてみたのが表2である。
 全業種では、前期比では6.9%の増加予想であるが、前年同期比では△3.5%と減少の予測となっている。
 これを業種別にみると、建設業では、設備投資の動向と同様に前年同期比△8.0%の減少予想となっている。では、設備投資の動向と同様に前年比△3.4%の減少予想となっている。 製造業全体では、前年同期比△0.7%と設備投資動向に反して減少の予測となっているが、個別の業種では、機械が前年同期比26.8%増の予想となった反面、木材・木製品、化学、金属が二桁減の予想となるなど業種間でバラツキがみられる。非製造業では、前年同期比△5.5%と設備投資の動向を反映おり、業種別にみても卸売業△10.5%、小売業△1.9%、運輸・サービス業△5.0%と軒並み減少の予測となっている。
 

表2 総売上高の実績と見通し       (単位:千円、%)

年度   8年度上期 8年度下期 9年度上期 9年度下期
業種 企業数 純売上高 純売上高 前期比 純売上高 前期比 前年比 純売上高 前期比 前年比
全産業 212 504,035,719 574,618,742 14.0 518,750,293 -9.7 2.9 554,618,001 6.9 -3.5
建設業 32 77,198,361 93,273,538 20.8 85,561,929 -8.3 10.8 85,829,963 0.3 -8.0
製造業 83 261,424,430 289,671,359 10.8 271,632,617 -6.2 3.9 287,712,934 5.9 -0.7
食料品 14 46,239,049 58,718,705 27.0 47,081,572 -19.8 1.8 61,006,772 29.6 3.9
繊維 4 2,105,680 2,006,615 -4.7 2,186,133 8.9 3.8 2,191,783 0.3 9.2
木材・木製品 6 9,351,053 10,009,008 7.0 8,645,748 -13.6 -7.5 8,961,680 3.7 -10.5
パルプ・紙・紙加工 3 8,454,083 8,198,098 -3.0 8,533,526 4.1 0.9 8,426,394 -1.3 2.8
化学 6 21,410,210 23,912,756 11.7 11,114,705 -53.5 -48.1 15,803,820 42.2 -33.9
窯業・土石 6 21,896,034 21,660,061 -1.1 21,985,735 1.5 0.4 22,350,012 1.7 3.2
鉄鋼 3 1,445,866 1,567,955 8.4 1,558,632 -0.6 7.8 1,639,326 5.2 4.6
出版・印刷 4 3,225,020 3,740,994 16.0 3,171,106 -15.2 -1.7 3,428,789 8.1 -8.3
金属 8 9,077,079 10,013,213 10.3 8,454,515 -15.6 -6.9 8,484,534 0.4 -15.3
機械 12 37,757,036 32,109,071 -15.0 37,470,985 16.7 -0.8 40,698,738 8.6 26.8
電気 13 96,456,866 113,807,976 18.0 117,252,565 3.0 21.6 110,724,062 -5.6 -2.7
精密 4 4,006,454 3,926,907 -2.0 4,177,395 6.4 4.3 3,997,024 -4.3 1.8
卸・小売・他 97 165,412,928 191,673,845 15.9 161,555,747 -15.7 -2.3 181,075,104 12.1 -5.5
卸 売 21 56,008,039 67,517,933 20.6 55,109,912 -18.4 -1.6 60,427,000 9.6 -10.5
小 売 30 79,904,779 86,314,338 8.0 77,939,937 -9.7 -2.5 84,705,145 8.7 -1.9
その他(運輸・サービス) 46 29,505,110 37,841,574 28.3 28,505,898 -24.7 -3.4 35,942,959 26.1 -5.0

 

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