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特集平成10年度新卒者の採用予定および初任給調査結果

初任給前年実績を上回るも、厳しい採用状況


 県内景況は、昨年4月の消費税率引き上げ以降悪化傾向が鮮明になり厳しい状況で推移している。先行き見通しへの不透明感も依然ぬぐいきれていない。そうした動向が、企業の新卒者採用意欲にも反映されるものとみられる。
 このような状況下、当産業情報センターでは、この春新卒者の採用を予定している企業を対象に、採用状況および初任給について調査を行った。その結果、新卒者の確保は昨年より一層厳しく、「概ね計画通り採用できる」とした企業は、47.9%と前年調査(57.2%)を下回った。
 一方、新卒者の初任給見込額は前年実績を上回った。

 

 この調査は、今春高校の新卒者の採用を予定している企業900社を対象として平成9年12月1日から12月15日にわたり実施したもので、回答企業数は474社(有効回収率52.7%)となっている。回答企業の内訳は、鉱業・建設業146社、製造業174社、卸売業28社、小売業41社、運輸・サービス業85社である。

 

採用状況 前年調査を下回る

 表1は企業における新卒者採用予定に対する確保の状況についてみたものである。全業種平均をみると、「概ね計画通り採用できる」とする企業割合は47.9%と前年調査の57.2%を9.3ポイント下回っている。反面、「計画通り採用できない」とする企業割合は29.5%と前年調査の26.8%を2.7ポイント上回った。なかでも「必要とする人材が確保できない」が10.3%(前年調査8.2%)、「募集人員に満たない」が10.1%(同9.2%)とそれぞれ前年調査を上回っている。このように採用意欲のある多くの企業では必要とする人材が確保できず満足のいかない採用活動となっている。また、「採用予定なし」と回答した企業も22.6%(同16.0%)と前年調査を上回っており、景気の先行き不透明感をうけ県内企業の雇用全体が抑制傾向にあるなか新卒者の採用意欲も弱まっていることがうかがわれる。業種別にみると、鉱業・建設業では「概ね計画通り採用できる」とする企業割合が38.3%(同50.3%)と前年調査に引き続き全業種中最も低くなっている。一方、小売業では「概ね計画通り採用できる」とする企業割合が61.0%(69.6%)と前年調査に引き続き全業種中最も高くなっている。
 次に、表2の新卒者の採用方法についてみると、各項目とも例年とほぼ同じ構成比率であり、「学校からの紹介」が70.0%と最も多く、各企業ともこれが新卒者の確保の大きめな決め手となっていることがうかがえる。また、業種別にみると、小売業では「学校からの紹介」、「職安からの斡旋」、「求人広告」の各項目で回答した企業割合が全業種中最も多く、採用活動の積極的な姿勢が目につく。
 

表1 新卒者の採用状況     (単位:%)
項目 採用予定あり 採用予定なし
概ね計画通り採用できる 計画通り採用できない 人数・人材が足りている 採用したいが控えている その他
募集人員に満たない 必要とする人材が確保できない 人数・人材のどちらも確保できない その他
鉱業・建設業 38.3 7.5 11.0 9.6 2.1 17.8 10.3 3.4
製造業 53.5 13.8 10.3 6.3 2.3 5.2 7.5 1.1
卸売業 46.5 10.7 7.1 10.7 0.0 3.6 14.3 7.1
小売業 61.0 7.3 17.1 7.3 0.0 2.4 4.9 0.0
運輸・サービス業 48.2 8.2 7.1 5.9 0.0 16.5 10.6 3.5
全業種平均 47.9 10.1 10.3 7.6 1.5 11.0 9.1 2.5


表2 新卒者の採用方法     (単位:%)
項目 学校からの紹介 職安からの斡旋 縁 故 求人広告 その他
鉱業・建設業 60.9 31.5 6.2 5.5 2.0
製 造 業 79.9 27.6 4.0 6.8 2.3
卸 売 業 50.0 32.1 3.5 17.8 7.1
小 売 業 90.2 36.6 0.0 19.5 17.1
運輸・サービス業 62.3 30.6 5.9 15.3 2.3
全業種平均 70.0 30.3 4.6 9.7 3.8

 

各学歴とも実績額を上回る

 表3は初任給見込額について学歴別にみたものである。前年実績との比較でみると、金額では、大卒女子が8千円台の増加で最も高く、以下短大・高専・専門校卒男子6千円台、同女子2千円台の順となり各学歴で前年実績を上回った。伸び率でも、大卒女子が4.9%と高い伸びで大卒男子との格差が縮まった形となっている。
 労働省の平成9年賃金構造基本統計調査結果速報(平成9年6月末現在)によると、全国の平均初任給は大卒男子193,900円、同女子186,200円、短大・高専卒男子168,900円、同女子161,000円、高卒男子156,000円、同女子147,300円となっている。いずれも県内企業の10年4月の見込額を大きく上回っている。
 

表3 学歴別初任給     (単位:%)
項 目    大 学     短大・高専・専門学校    高 校    
男子 女子 男子 女子 男子 女子
10年4月(予測) 176,581 174,962 160,461 150,414 144,898 136,707
9年4月(実績) 176,021 166,838 153,655 147,558 143,235 136,569
増減 金額 560 8,124 6,806 2,856 1,663 138
伸び率 0.3 4.9 4.4 1.9 1.2 0.1

 

鉱業・建設業で高い見込額

 表4は男子の業種別の初任給見込額を表している。各業種の学歴別平均をみると、鉱業・建設業では大卒183,524円、170,004円、高卒152,758円と各学歴で最も高くなっている。また、製造業では大卒177,050円、卸売業では短大・高専・専門学校卒161,774円とそれぞれ全業種平均を上回っている。一方、小売業、運輸・サービス業では各学歴で全業種平均を下回っている。また、職種別の全業種平均をみると、大卒と高卒では技術職が、短大・高専・専門学校卒では営業職がそれぞれ他職種より高くなっている。反面、各学歴で事務職が他職種より低くなっている。
 表5は女子のそれを表している。各業種の学歴別平均をみると、ここでも鉱業・建設業が大卒180,000円、高卒149,875円と最も高く短大・高専・専門学校卒も149,875円と全業種平均を大きく上回っている。また、運輸・サービス業では短大・高専・専門校卒154,542円と最も高く、大卒、高卒も全業種平均を上回っている。また、卸売業では大卒、短大・高専・専門学校卒で全業種平均を上回っている。一方、製造業では各学歴すべてで、小売業では大卒、短大・高専・専門学校卒で全業種平均を下回っている。また、職種別の全業種平均をみると、短大・高専・専門学校卒と高卒では営業職が、大卒では技術職がそれぞれ他業種より高くなっている。反面、ここでも事務職が大卒と短大・高専・専門学校卒で他職種より低くなっている。
 このように、男女ともに同じ学歴でも業種別さらには職種別にそれぞれ格差が顕著となっている。また、男子では技術職を、女子では営業職を学歴問わず厚遇で確保したいとする傾向がうかがわれる。
 

表4 男子新卒者の業種別初任給(平均値)     (単位:人、円)
学歴 職種 鉱業・建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・サービス業 平均
人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額
大学 技術 38 183,921 47 177,390 0 0 4 173,164 5 181,300 94 180,336
事務 1 177,490 3 181,000 0 0 0 0 11 163,533 15 168,966
営業 4 181,267 4 170,100 5 174,840 38 171,342 8 171,520 59 172,722
平均 43 183,524 54 177,050 5 174,840 42 171,596 24 169,886 168 176,646
短大・高専・専門 技術 32 170,630 29 158,471 5 165,500 22 149,500 16 140,800 104 160,895
事務 2 160,000 0 0 4 160,333 0 0 5 152,533 11 156,943
営業 0 0 1 165,000 8 160,167 7 154,976 3 187,600 19 160,952
平均 34 170,004 30 158,688 17 161,774 29 150,821 24 149,094 134 160,800
高校 技術 176 170,938 349 142,028 6 149,125 19 137,438 79 141,155 629 145,897
事務 1 137,000 5 141,667 1 135,000 0 0 16 141,033 23 140,291
営業 1 137,000 4 151,667 16 135,025 60 138,968 44 141,971 125 140,354
平均 178 152,758 358 142,130 23 138,702 79 138,600 139 141,399 777 144,839

 

表5 女子新卒者の業種別初任給(平均値)     (単位:人、円)
学歴 職種 鉱業・建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・サービス業 平均
人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額
大学 技術 1 180,000 3 170,032 0 0 1 250,000 3 194,250 8 189,799
事務 0 0 0 0 1 140,000 4 148,825 4 176,750 9 158,230
営業 0 0 2 154,000 2 192,000 10 169,274 9 175,233 23 173,279
平均 1 180,000 5 163,619 3 174,666 15 169,202 16 179,177 40 173,196
短大・高専・専門 技術 0 0 9 149,017 5 152,167 1 141,000 2 150,000 17 149,300
事務 5 151,667 11 148,171 1 155,000 3 146,500 18 148,600 38 148,909
営業 0 0 0 0 0 0 14 151,750 8 169,050 22 155,210
平均 5 151,667 20 148,551 6 152,639 18 150,277 28 154,542 77 150,795
高校 技術 16 151,510 270 132,235 2 151,500 1 147,000 38 129,320 327 134,337
事務 2 136,800 37 141,051 3 121,250 6 143,667 45 138,736 93 139,344
営業 0 0 1 135,000 2 135,000 100 140,145 52 141,107 155 140,260
平均 18 149,875 308 133,303 7 133,821 107 140,406 135 136,998 575 136,743

 

「300人以上」で平均を下回る

 表6は初任給見込額を従業員規模別にみたものである。  これをみると「10人未満」、「20〜29人」、「30〜49人」では各学歴男女で概ね平均を上回っているのに対し、「10〜19人」、「100〜299人」、「300人以上」では一部を除き大半が平均を下回っている。また、学歴別にみると大卒男子では従業員規模が小さくなるに従い高くなっているのが特徴的である。大卒女子にも同様の傾向がみられ大学新卒者の大企業志向が強いなか待遇面での魅力を強調し人材を確保したいとする意図がうかがわれる。また、従業員規模別各学歴での最大の格差は、大卒男子43,804円、同女子56,449円、短大・高専・専門校卒男子22,478円、同女子23,700円、高卒男子10,497円、同女子7,709円となっている。大卒男女で4万円以上の大幅な格差が目立ったほか、それ以外の学歴でも相当な開きがあるが、従業員規模に比例して格差がつく傾向はみられず、規模の小さい企業ほど新卒者確保のため初任給額への配慮をしている様子がうかがわれる。
 

表6 従業員規模別初任給     (単位:人、円)
学歴 性別 10人未満 10〜19人 20〜29人 30〜49人 50〜99人 100〜299人 300人以上
人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額
大学 1 215,000 0 0 8 195,225 15 184,100 42 174,343 71 172,002 40 171,196
1 215,000 0 0 0 0 8 181,283 3 171,666 8 158,551 20 172,763
短大・高専・専門 0 0 3 175,000 11 175,185 19 159,642 41 156,560 59 159,560 11 152,707
0 0 2 142,500 7 152,522 6 166,200 16 150,533 22 151,042 25 142,697
高校 8 145,833 49 137,612 25 142,877 93 148,109 190 144,234 296 140,807 11 142,697
1 135,000 18 135,858 25 137,285 41 134,287 162 138,156 208 140,408 118 141,996

 

地域別にも格差

  表7は県内広域生活圏別に初任給見込額をみたものである。これをみるとをしている様子がうかがわれる。盛岡地域では各学歴男女とも平均を上回っており、岩手中部、胆江、両磐でも概ねそれぞれ平均を上回っている。その他の地域では、釜石、二戸地域で大卒男子が18万円台、気仙、宮古地域で大卒女子が17万円台と平均を上回ったほか、気仙、二戸地域で短大・高専・専門校が15万円台、釜石、宮古地域で高卒男子が14万円台と平均を上回っている。このように商工業が集積している盛岡、岩手中部、胆江地域では大半が平均を上回っているが、それ以外の地域ではほとんどが平均を下回っており、特に久慈地域では平均を上回ったものがなく、地域別にも初任給における格差がみられる。また、前年調査では平均を上回っていた盛岡、岩手中部地域では一部を除き大半が平均を下回っており、商工業の集積地として高い伸びを示してきた初任給に歯止めがかかった形となっている。
 

表7 広域生活圏別初任給(単位:人、円)
地域

性別

  大 学   短大・高専・専門   高 校  
人員 金額 人員 金額 人員 金額
盛岡 64 174,268 50 156,242 269 143,421
22 172,196 32 148,321 187 138,891
岩手中部 32 172,719 39 165,200 142 148,568
3 168,917 17 149,293 98 141,728
胆江 22 180,571 30 163,176 116 146,551
0 0 7 161,467 49 135,419
両磐 12 194,500 6 168,670 102 144,220
4 191,167 9 147,583 89 138,673
気仙 14 170,500 5 149,667 37 138,668
8 173,500 5 141,650 22 135,914
釜石 8 193,800 5 161,300 52 149,223
3 187,600 3 187,600 47 135,503
宮古 5 184,250 1 150,000 26 137,757
0 0 1 160,000 31 132,825
久慈 0 0 3 119,000 17 144,510
0 0 0 0 26 122,060
二戸 20 170,000 7 146,650 16 130,833
0 0 4 135,000 24 128,000

 

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