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特集●平成10年景気見通し調査結果

年内の景況に不透明感 経営は慎重姿勢へ


 平成9年の我が国経済は、金融システムへの不安が顕在化し、消費税引き上げ後の個人消費の低迷が企業収益の足を引っ張り始めた。それら懸念材料により景況感の悪化が鮮明になり有効な対応策を求める声が強まった。
 この中にあって、平成10年の県内景況はどのように推移するのかを知り、企業経営の参考にしていただくため、岩手県産業情報センターは、県内の企業経営者を対象に調査票及び聞き取り調査により「平成10年景気見通し調査」を行った。

 

 この調査は、当産業情報センターが昭和50年から実施しているもので、県内企業の経営者に新年の景況について予測してもらったものである。調査時点は平成9年11月1日現在、調査対象企業は毎月の経営動向調査を実施している62業種1,650企業で、回収サンプル数は637企業(回収率38.6%)である。業種別の内訳は、鉱業16、建設業86、製造業223、卸売業62、小売業173、運輸業34、サービス業43となっている。

 

売上全業種で減少予測

 表1は回答のあった企業の各四半期の売上、収益の伸び率の見通しを単純平均したものである。
 まず、売上の見通しについてみると、全業種平均では、1〜3月期を93.9%、4〜6月期を95.1%、7〜9月期を95.9%、10〜12月期は96.6%と年間を通して「前年を下回る」とみている。
 これを業種別にみると、ここでもすべての業種が年間を通して「前年を下回る」とみている。前年調査では「前年を上回る」とみていた、鉱業、卸売業もそれぞれ3.4〜6.1%減(前年調査0.4〜4.5%増)、2.5〜6.2%減(同0.7〜2.8%増)となりすべての業種で「前年を下回る」との予測結果となった。なかでも建設業が6.8〜10.3%減と最も大きい減少幅となっている。厳しい予測をしていた前年よりもさらに減少の度合を強めた見通しとなっている。
 また、個々の業種別にみると、年間を通して「前年を上回る」とみているのは、酒販店(16.0〜29.5%増)のみで前年調査の11業種から大きく減少している1〜3四半期間での増加予測業種をみても11業種と前年調査の32業種から大きく減少している。一方、年間を通して「前年を下回る」とみているのは41業種(同18業種)で大きく増加しており、なかでも鋳物工業、靴・履物小売業が年間を通して10%超の減少という厳しい予測となっている。

 

長引く収益減少予測

 次に、収益の見通しについてみると、全業種平均では、1〜3月期を91.8%、4〜6月期を93.5%、7〜9月期を92.9%、10〜12月期は93.9%とここでも年間を通して「前年を下回る」とみており、各期の売上見通しよりもさらに厳しい予測となっている。また、平成3年以来、8年連続の減少予測となった。
 業種別にみても、運輸業が4〜6月期に18.1%「前年を上回る」とみている以外はすべての業種で「前年を下回る」と予測している。なかでも鉱業の減少幅は13.1〜14.4%減と最も大きく次いで建設業の9.3〜13.4%減の順となっている。
 個々の業種別にみると、年間を通して「前年を上回る」とみている業種はなし(前年調査5業種)となった。逆に、年間を通して「前年を下回る」とみているのは44業種(同36業種)に増加した。特に食堂・レストランで27.5〜32.5%減と減少幅が最も大きく、次いでここでも売上の見通しと同様に鋳物工業、靴・履物小売業で15%超の大幅な減少予測となっている。
 

表1 業種別売上・収益見込(前年同期比,単純平均、単位:%)
区分 売上 収益
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月
全 業 種 93.9 95.1 95.9 96.6 91.8 93.5 92.9 93.9
鉱 業 90.9 91.3 91.3 93.8 86.6 86.9 85.6 85.6
建 設 業 93.2 89.7 91.0 92.9 90.7 86.6 87.9 89.9
土木 92.4 88.3 90.7 90.2 89.1 87.6 88.1 89.7
建築 91.1 88.6 89.9 91.5 90.3 85.2 87.6 87.5
設備 96.6 92.2 92.8 97.0 92.7 87.5 88.0 93.3
製 造 業 93.3 94.8 95.9 95.7 92.3 92.2 93.5 94.4
畜産食料品 99.0 99.5 103.8 102.6 93.8 95.6 98.4 99.1
水産食料品 99.2 101.8 102.9 103.5 97.5 99.0 98.7 99.2
パン・生菓子 93.0 95.4 95.0 97.4 91.0 93.0 95.0 95.0
ビスケット・干菓子 92.5 95.0 101.3 96.3 96.3 98.0 105.5 98.0
酒造 97.8 98.8 99.1 99.8 94.6 95.7 96.2 96.3
麺類 82.5 83.3 90.8 89.2 80.0 81.7 88.3 86.7
豆腐・油揚 x x x x x x x x
メリヤス 95.3 101.1 93.6 95.3 82.9 94.3 91.0 88.6
縫製 95.0 99.0 101.2 97.0 97.0 97.0 97.0 97.0
一般製材 83.6 90.0 93.9 93.2 86.6 90.9 93.2 93.2
木材チップ 98.2 99.2 96.5 94.6 95.0 94.2 92.7 92.3
合板 92.5 92.8 97.0 98.2 86.0 85.0 93.5 95.0
建具 88.3 87.6 89.0 90.0 88.6 89.4 88.0 97.9
出版印刷 99.6 100.3 97.2 96.7 97.0 96.3 94.0 93.3
生コンクリート 87.4 89.1 94.1 94.7 79.2 80.8 90.5 106.6
コンクリート製品 86.8 88.2 90.4 91.3 88.2 88.2 90.8 88.6
鋳物工業 87.2 89.1 86.4 88.7 84.7 86.1 82.9 85.2
金属製品 94.1 95.0 95.0 93.8 96.9 95.9 95.3 93.8
一般機械 91.8 92.5 94.5 92.7 92.3 92.4 93.6 92.8
電気機械 96.6 98.5 99.3 99.5 94.3 96.3 96.1 96.3
輸送用機械 98.3 94.0 94.5 94.7 92.2 93.3 92.0 93.0
精密機械 101.1 99.4 99.4 97.8 128.9 94.4 94.4 93.3
卸 売 業 93.8 95.2 95.9 97.5 92.7 94.5 94.4 96.4
衣料品 94.6 98.3 95.1 98.2 92.0 97.2 94.4 97.1
青果市場 88.0 90.3 89.0 90.6 95.1 97.4 92.6 98.4
生鮮魚介類 95.6 97.8 97.9 100.0 96.5 96.5 95.3 97.8
飲食料品 100.0 101.0 104.0 98.0 97.0 99.0 100.0 97.0
家電 97.5 97.5 101.3 103.3 98.8 97.5 98.8 99.5
建材 91.4 92.3 94.8 96.8 88.9 89.7 92.0 93.4
一般機械卸 96.1 95.4 96.0 99.0 91.0 93.7 95.6 98.4
小 売 業 94.5 97.4 98.0 98.9 90.8 93.4 94.0 94.6
大規模小売 95.2 99.9 99.2 99.2 93.1 97.2 97.0 96.8
中小スーパー 96.5 98.1 99.5 99.8 97.8 98.6 100.0 100.5
衣料品 95.4 94.8 94.6 95.5 94.9 94.6 94.7 95.0
靴・履物 84.5 88.7 86.7 89.5 74.5 77.5 74.2 75.8
各種食料品 95.0 97.0 96.0 93.0 93.0 95.0 94.0 91.0
酒販店 116.0 124.5 124.5 129.5 93.0 95.0 96.0 96.0
食肉 99.3 100.0 98.3 99.3 95.3 95.0 94.3 95.7
鮮魚・乾物 x x x x x x x x
果実 85.0 92.5 91.3 93.8 98.8 100.0 101.3 101.3
自動車 89.6 103.3 100.0 93.3 93.3 100.0 101.3 101.3
自転車 95.0 103.3 100.0 93.3 93.3 100.0 100.0 90.0
家具 85.0 90.6 94.0 94.4 84.6 89.6 94.6 94.6
家電 92.5 94.6 96.7 99.2 90.0 92.5 92.5 96.3
医薬品・化粧品 90.0 92.5 95.0 93.3 87.5 90.8 93.3 91.7
農耕用品 90.0 97.8 97.8 91.7 87.2 95.0 96.1 90.0
ガソリンスタンド 96.6 96.1 98.5 99.7 86.1 89.0 90.1 91.9
書籍・文房具 92.5 93.3 90.0 90.0 91.7 92.5 88.3 88.3
スポーツ用品 95.0 102.4 94.8 90.4 97.0 102.0 94.0 89.0
時計・カメラ・メガネ 95.0 98.0 98.0 102.0 97.0 100.0 100.0 104.0
運 輸 業 96.0 96.6 96.1 98.7 92.4 118.1 92.8 94.6
タクシー 92.5 91.3 90.8 92.9 89.6 88.8 89.2 90.4
道路貨物 98.0 99.5 99.0 101.9 93.9 134.1 94.8 96.9
サービス業 96.3 96.7 98.0 97.4 94.7 95.5 95.8 95.5
観光旅館 99.2 96.7 99.0 99.0 99.4 97.8 100.3 99.4
ビジネスホテル 100.0 99.4 100.0 100.0 101.1 100.0 99.4 101.1
クリーニング 96.7 100.0 100.0 96.7 100.0 100.0 100.0 100.0
理容 90.8 98.3 100.0 98.9 90.0 97.5 98.8 97.5
美容 96.7 95.0 93.3 96.7 100.0 95.0 93.3 96.7
自動車整備業 92.5 98.1 94.4 94.4 92.5 97.5 94.4 94.4
食堂・レストラン 92.5 95.0 97.5 92.5 67.5 70.0 72.5 67.5
注)Xはサンプル数が2企業以下のため秘匿扱い

 

消費需要 引き続き期待薄

 図3は、自己の企業に関係なく今年の消費需要の動向を予測してもらったものである。全業種では、「落ち込む」とする企業70.5%(前年調査35.7%)が「伸びる」の5.5%(同16.4%)を大きく上回った。前年調査に比べても「落ち込む」が34.8ポイント増加とほぼ倍増し、「伸びる」が10.9ポイント減少した。また、「前年と変わらず」も20.6%(同45.2%)と24.6ポイント減少した。


景気見通し調査結果

 

一層厳しさ増す資金繰り

 図4は、各企業の今年の資金繰りを予測してもらったものである。全業種では、「苦しくなる」とする企業61.0%(前年調査42.6%)が「楽になる」の5.4%(同10.3%)を大きく上回っている。前年調査に比べても「苦しくなる」とする企業の割合が大幅に増加しており、より一層厳しさが増すと予測している。
 業種別にみても、すべての業種で「苦しくなる」が「楽になる」を上回っており、特に運輸業で73.5%、建設業で72.1%の企業が「苦しくなる」と予測しているのが懸念される。

景気見通し調査結果

 

借入金利に底打ち感

 表2は、産業別の借入金利の動向を予測してもらったものである。前年調査に比べて、「低下する」が6.1%(同4.2%)と増加し、「上昇する」が10.5%(同15.2%)と減少した。また、「変わらない」は64.8%(同63.3%)と増加した。前年調査に引き続き金利低下予測に底打ち感が強い。
 

表2 業種別借入金利予測(単位:%)
区分 借入金利変動予測 低下予測 不変 上昇予測 単純平均
低下する 変わらない 上昇する 借入金なし わからない
無回答
現在
金利
予測
金利
現在
金利
現在
金利
予測
金利
現在
金利
予測
金利
鉱業 6.3 68.8 6.3 18.8 0.0 3.50 3.00 2.91 0.00 0.00 2.96 3.00
建設業 7.0 58.1 17.4 15.1 2.3 2.57 1.87 2.78 3.50 5.07 2.91 4.13
製造業 4.5 65.9 9.9 16.1 3.6 3.27 2.56 2.91 2.75 3.43 2.91 3.11
卸売業 4.8 62.9 11.3 21.0 0.0 2.65 2.40 2.64 1.95 2.51 2.52 2.47
小売業 5.8 71.1 8.7 13.3 1.2 3.32 2.26 2.86 2.75 3.38 2.88 2.98
運輸業 8.8 64.7 14.7 8.8 2.9 2.95 1.20 2.86 2.46 2.97 2.82 2.26
サービス業 14.0 48.8 4.7 20.9 11.6 3.49 2.51 2.68 2.85 3.30 2.91 2.71
全業種 6.1 64.8 10.5 15.7 2.8 3.14 2.28 2.84 2.82 3.70 2.86 3.12

 

ベアなしの割合増加

 図5は今年のベースアップ予定の分布を表したものであるが、全業種では、ベアなしとする企業が27.7%(前年調査20.5%)と最も多く、前年最も多かった2.1〜3.0%と入れ替わった。ここでも売上、収益の見通しを反映し厳しい対応になると予測している。業種別にみると小売業、運輸業、鉱業でベアなしとする企業の割合がいずれも35%超となっている。反面、建設業では6.1%以上の予定が8.2%あるなど業種によりバラツキがみられる予測となっている。

景気見通し調査結果

 

釜石地域前年を上回る

 次に表3は、県内広域生活圏における各見通しをみたものである。
 まず、売上をみると、全期を通じて「前年を上回る」とみるところはないものの、釜石地域が2四半期間にわたって、僅かながら「前年を上回る」とみている。
 収益についても、全期を通じて「前年を上回る」とみるところはないが、久慈地域では4〜6月期に「前年を上回る」とみている。
 

表3 広域生活圏別・売上・収益見込(単位:円 %)
区分 売上 収益
1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月 1〜3月 4〜6月 7〜9月 10〜12月
盛岡 94.7 96.0 96.8 97.5 92.3 93.6 94.0 94.6
製造 94.4 97.0 98.2 96.8 92.6 94.3 94.3 92.8
非製造 94.8 95.8 96.3 97.7 92.2 93.4 93.9 95.2
岩手中部 94.8 94.6 95.6 96.2 94.9 91.7 92.3 93.2
製造 94.2 92.7 94.7 95.9 99.0 89.9 91.1 91.7
非製造 95.2 95.9 96.1 96.5 92.3 92.8 93.0 94.1
胆江 92.2 93.5 94.4 95.1 90.2 91.7 93.5 97.9
製造 90.7 93.2 95.0 94.7 87.9 91.0 94.4 101.8
非製造 93.2 93.7 93.9 95.3 91.8 92.2 92.8 95.2
両磐 95.4 97.0 96.7 97.3 89.8 92.7 92.5 92.7
製造 94.8 93.7 95.1 95.8 91.1 95.6 93.9 94.2
非製造 95.7 97.2 97.7 98.2 88.9 90.9 91.6 91.8
気仙 89.8 92.5 91.1 93.6 89.7 90.4 89.6 90.4
製造 89.1 91.1 90.1 90.4 90.9 92.5 90.3 90.8
非製造 90.2 93.2 91.6 95.1 89.1 89.4 89.2 90.2
釜石 97.5 99.0 100.1 100.7 92.7 92.4 96.7 93.6
製造 97.2 97.0 98.2 97.2 95.2 94.8 96.0 95.3
非製造 97.6 100.0 101.1 102.6 91.3 91.1 92.5 92.7
宮古 92.6 92.5 96.0 96.1 90.7 89.7 93.2 93.0
製造 92.9 95.5 96.4 96.9 89.0 88.1 91.7 92.4
非製造 92.4 90.0 95.6 95.4 92.0 91.0 94.4 93.6
久慈 93.3 94.8 95.2 95.3 91.5 121.3 93.4 93.4
製造 90.0 96.1 101.9 100.0 88.2 91.1 99.3 97.5
非製造 96.3 93.8 89.4 91.3 94.4 147.8 88.3 89.9
二戸 91.6 91.9 94.2 94.4 91.5 90.1 90.6 91.7
製造 95.0 93.8 93.1 92.3 95.0 91.7 90.9 90.2
非製造 88.9 90.4 95.1 96.0 88.8 88.8 90.3 92.9

 

ふたたび経費節減へ

 最後に、今回の調査票の「経営方針についての抱負」覧及び県内160企業等との面接調査の内容をまとめてみると、製造業については、前年調査では減少した「経費節減」に関するものがふたたび増加して慎重な経営姿勢がうかがえる。反面、「市場ニーズ(多品種少量生産)への対応」、「高付加価値製品の開発」、「自社製品、新商品の開発」、「ISO規格取得」、「異業種交流」、「新分野への進出」、「営業力の強化」、「販路の開拓」など設備投資も含めて積極展開を図りたいとするコメントも目につくが、そこでも景気全体の見通しへの不透明感から「慎重にタイミングを探り条件が整ったうえでのこと」と付け加えているものが多い。懸念材料としては、「新規参入業者出現による受注競争の激化」、「公共工事削減による受注の減少」、「消費税率の引き上げの影響」、「人材の確保難」などがあげられている。
 非製造業についても、「経費節減への取り組み」が圧倒的に多い。前年調査に比べて「価格破壊」に関するものが減少し、「消費者ニーズの多様化、個性化への対応」、「独自性追求」、、「オリジナル商品の開発・販売」、「情報の収集・分析・提供」、「高齢化社会への対応」、など価格低下競争から離れて消費者ニーズに発展の可能性を求める姿勢がうかがえる。また、懸念材料としては「規制緩和による競争の激化」、「大型小売店の出店件数の増加」、「消費税率の引き上げの影響」、「運転資金の確保難」などがあげられている。

 

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