特集●平成9年求人実態調査結果
依然慎重さの感じられる雇用情勢
岩手県産業情報センターは、8月30日現在で県内中小企業を対象に求人動向調査を実施した。回収サンプル数は461企業である。
これによると、今春の新卒者に対する求人企業比率はほぼ前年並みであり、県内の雇用情勢は依然として慎重な足取りで推移している。
この調査は当産業情報センターが毎月実施している経営動向調査の対象企業62業種1,650企業に対し8月に調査を実施し分析したもので、回収サンプル数は、鉱業12、建設業80、製造業182、卸売業43、小売業88、運輸業23、サービス業33、合計461社となっている。
表1は業種別の求人状況を示している。これによると、今年の新卒者に対して求人のあった企業比率は38.6%(前年調査38.0%)と前年比0.6ポイント上回り、求人数も888人(461社中)で1企業当たり1.9人と前年調査の1.9人(558社中1044人)と同じ数値となった。これを業種別にみると、1企業当たりの求人数は、鉱業0人(前年調査0.2人)、建設業1.5人(同1.9人)、製造業2.0人(同1.6人)、卸売業1.2人(同0.9人)、小売業2.1人(同2.9人)、運輸業0.8人(同0.5人)、サービス業4.7人(同2.3人)となっており、サービス業での伸びが目立っている。
これに対して、新卒採用者のあった企業比率は36.9%(前年調査37.8%)と前年比0.9ポイント下回り、新卒の就職者数も784人で1企業あたり1.7人とここでも前年調査の1.7人と同じ数値となった。また、全体の充足率(採用者数÷求人数)は求人数の増加に対し新卒採用者数が減少したため、88.3%となり前年調査の90.8%を2.5ポイント下回った。業種別にみると、卸売業、小売業で求人数を上回る高い充足率を示し、サービス業が90%台、製造業が80%台、建設業が70%台となっている。
一方、今年4月から6月までに離職者(定年や解雇、死亡等によらない任意の離職者)のあった企業比率は34.9%(前年調査39.4%)と4.5ポイント下回ったほか、1企業当たりの離職者数も1.1人と前年調査を0.3人上回った。
また、この3ヵ月間の中途採用の企業比率は常用が40.1%(前年調査38.2%)臨時7.6%(同6.8%)と増加し、1企業当たりの採用者数は常用が1.1人(同1.1人)、臨時0.3人(同0.3人)と両者合計で1.4人となり前年調査と同じである。
業種別に特徴をみると、鉱業は求人、離職者が無く、中途採用者の比率が高い。建設業は例年どおり中途採用者の比率が高い。製造業は繊維、印刷、一般電気、輸送機械で求人比率が高く
反面、離職者比率も高い数値となる傾向がある。卸売業は求人、就職者が前年を下回ったが、離職者のある企業比率が前年調査より高くなった。小売業は求人企業比率は前年調査より高くなったが、離職者の企業比率も高くなった。運輸業は中途採用者、離職者とも比率が高い傾向にある。サービス業は新卒者の企業比率が高くなり、中途採用者の比率が低くなった。
景気は回復基調にあるものの、求人状況はこのように業種により異なっており、企業の採用意欲には依然慎重さが感じられる。
表1 業種別求人状況
項目 業種 |
1企業当たり従業員数
|
新規学卒者 |
同採用者 |
9/4〜9/6の離職者 |
9/4〜9/6の中途採用者 |
増減 |
1企業当たり増減 |
求人企業比率 |
求人数 |
採用者のあった企業比率 |
採用者数 |
離職者のあった企業比率
|
離職者数 |
常 用 |
臨 時 |
企業比率 |
採用者数 |
企業比率 |
採用者数 |
鉱 業 |
24.0 |
0.0 |
0 |
0.0 |
0 |
0.0 |
0 |
33.3 |
9 |
0.0 |
0 |
9 |
0.8 |
建 設 |
40.0 |
55.0 |
118 |
53.8 |
91 |
33.8 |
46 |
48.8 |
63 |
3.8 |
4 |
112 |
1.4 |
製 造 |
63.1 |
39.0 |
358 |
37.4 |
294 |
34.6 |
239 |
41.2 |
221 |
12.1 |
99 |
375 |
2.1 |
食 品 |
66.6 |
26.3 |
57 |
26.3 |
56 |
39.5 |
118 |
50.0 |
60 |
26.3 |
83 |
81 |
2.1 |
繊 維 |
114.0 |
60.0 |
43 |
40.0 |
6 |
60.0 |
20 |
60.0 |
30 |
10.0 |
1 |
17 |
1.7 |
木 材 |
38.3 |
8.3 |
7 |
8.3 |
4 |
29.1 |
9 |
29.2 |
19 |
4.2 |
1 |
15 |
0.6 |
建 具 |
15.8 |
25.0 |
1 |
25.0 |
1 |
25.0 |
1 |
25.0 |
2 |
0.0 |
0 |
2 |
0.5 |
印 刷 |
51.2 |
64.3 |
32 |
64.3 |
31 |
14.3 |
5 |
35.7 |
8 |
14.3 |
2 |
36 |
2.6 |
窯 業 |
31.9 |
18.5 |
20 |
14.8 |
9 |
11.1 |
3 |
18.5 |
9 |
3.7 |
3 |
18 |
0.7 |
鋳 物 |
35.6 |
40.0 |
5 |
20.0 |
3 |
20.0 |
2 |
80.0 |
5 |
0.0 |
0 |
6 |
1.2 |
金 属 |
40.7 |
45.5 |
24 |
45.5 |
18 |
27.3 |
9 |
36.4 |
8 |
0.0 |
0 |
17 |
1.5 |
一般機械 |
103.1 |
80.0 |
39 |
80.0 |
38 |
60.0 |
23 |
60.0 |
16 |
10.0 |
1 |
32 |
3.2 |
電気機械 |
100.8 |
70.6 |
65 |
64.7 |
55 |
58.8 |
25 |
47.1 |
29 |
17.6 |
5 |
64 |
3.8 |
輸送機械 |
101.9 |
63.6 |
45 |
72.7 |
50 |
36.4 |
13 |
36.4 |
19 |
18.2 |
2 |
58 |
5.3 |
精密機械 |
69.3 |
45.5 |
20 |
54.5 |
23 |
45.5 |
11 |
54.5 |
16 |
9.1 |
1 |
29 |
2.6 |
卸 売 |
35.7 |
30.2 |
51 |
30.2 |
52 |
39.5 |
44 |
27.9 |
23 |
0.0 |
0 |
31 |
0.7 |
小 売 |
46.6 |
38.2 |
189 |
32.6 |
193 |
36.0 |
101 |
32.6 |
61 |
45.0 |
15 |
168 |
1.9 |
運 輸 |
77.6 |
16.7 |
18 |
12.5 |
11 |
54.2 |
25 |
54.2 |
67 |
8.3 |
2 |
55 |
2.4 |
サ−ビス |
49.9 |
35.3 |
154 |
41.2 |
143 |
26.5 |
57 |
38.2 |
64 |
11.8 |
7 |
157 |
4.8 |
合 計 |
52.1 |
38.6 |
888 |
36.9 |
784 |
34.9 |
512 |
40.1 |
508 |
7.6 |
127 |
907 |
2.0 |
*増減=新規学卒者+中途採用者−離職者
表2は8年4月から9年6月までの15ヵ月間の離職者の状況を示している。全体では、47.9%の企業で離職者があり、前年調査の39.4%を8.5ポイント上回った。業種別にみると、建設業で前年調査を15.3ポイント上回ったのをはじめ、卸売業、小売業、製造業、運輸業、サービス業で前年調査を上回った。唯一鉱業においては離職者がなかった。離職理由の内訳で最も多かったのが「仕事が本人の性格にあわない」の52.0%(前年調査45.0%)で、次いで「結婚・出産等本人の家庭の事情」の51.1%(同45.0%)となっている。以下、「職場の人間関係がうまくいかない」が20.8%(同25.9%)、「給料が安い」が13.1%(同11.8%)の順となっている。
これを業種別にみると、建設業、製造業、運輸業で「仕事が本人の………」が最も高く、卸売業、小売業、サービス業製造業で「結婚・出産………」が最も高い。
表2 県内企業の離職状況 (単位:%)
業 種
項目 |
鉱業 |
建設業 |
製造業 |
卸売業 |
小売業 |
運送業 |
サービス業 |
総平均 |
離職者のあった企業割合(8/4〜9/6) |
0.0 |
50.0 |
47.8 |
51.2 |
46.6 |
69.6 |
45.5 |
47.9 |
企業主からみた離職の理由 |
仕事が本人の性格にあわない |
|
40.0 |
54.0 |
45.5 |
56.1 |
75.0 |
46.7 |
52.0 |
結婚・出産等本人の家庭の事情 |
32.5 |
48.3 |
59.1 |
65.9 |
37.5 |
80.0 |
51.1 |
その他 |
30.0 |
23.0 |
13.6 |
24.4 |
18.8 |
6.7 |
22.2 |
職場の人間関係がうまくいかない |
17.5 |
18.4 |
22.7 |
24.4 |
37.5 |
13.3 |
20.8 |
給料が安い |
5.0 |
12.6 |
18.2 |
14.6 |
25.0 |
13.3 |
13.1 |
労働条件が厳しい |
0.0 |
6.9 |
9.1 |
12.2 |
25.0 |
6.7 |
8.1 |
独立開業 |
7.5 |
3.5 |
9.1 |
9.8 |
6.3 |
26.7 |
7.7 |
回答なし |
10.0 |
6.9 |
9.1 |
2.4 |
0.0 |
6.7 |
6.3 |
*重複回答があるため合計は100%を越える
次に、図1は、業種別、年代別、性別の離職者の比率である。全業種では、例年のとおり、20代の男子で22.0%、20代の女子で20.0%と突出している。他の年代では、新卒者、10代で10%を切る比率となっている。また年代別に離職者をみると、20代以上で男子の離職者が女子を上回っており、新卒者、10代では女子の離職者が男子を上回っている。
業種別ににみると、当然のことながら建設業では、各年代で男子が高く、同業種全体の80%を超えている。製造業では、20代男女から50代男女まで各年代に分布している。卸売業、小売業では20代男女で60%を超える高い比率を示している。また、運輸業では20代から50代の男子で90%以上を占め、サービス業では、男女とも20代で高い比率を示している。
表3は、来春の新卒者の求人状況を示している。全業種では、「採用せず」の企業が31.9%と前年調査の35.8%を3.9ポイント下回り、「採用計画あり」と回答した企業は39.3%と前年調査の
34.8%を4.5ポイント上回った。また、「採用せず」の理由として、「現在の従業員で十分」と回答した企業が33.0%で前年調査を4.5ポイント上回った。「採用計画あり」と回答した企業のうち、求人を「全部あるいは一部申し込んだ」と回答した企業は、78.9%である。
表3 来春学卒者求人申込状況 [( )内は前年調査 単位:%]
|
鉱 業 |
建 設 |
製 造 |
卸 売 |
小 売 |
運 輸 |
サ−ビス |
計 |
採用せず |
現在の従業員で十分 |
50.0 |
10.0 |
25.3 |
20.9 |
38.6 |
34.9 |
24.2 |
25.7 |
42.9 |
15.3 |
33.8 |
17.4 |
44.2 |
23.1 |
40.0 |
33.0 |
採用条件があわない |
0.0 |
0.0 |
2.2 |
4.7 |
2.3 |
4.3 |
3.0 |
2.3 |
0.0 |
1.4 |
1.9 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
2.2 |
1.1 |
その他、理由なし |
8.3 |
2.5 |
3.3 |
7.0 |
3.4 |
4.3 |
6.1 |
3.9 |
0.0 |
0.0 |
1.0 |
6.5 |
2.2 |
7.7 |
0.0 |
1.7 |
小 計 |
58.3 |
12.5 |
30.8 |
32.6 |
44.3 |
43.5 |
33.3 |
31.9 |
42.8 |
16.7 |
36.7 |
23.9 |
46.4 |
30.8 |
42.2 |
35.8 |
採用するかどうか
まだ決めていない |
33.3 |
30.0 |
30.2 |
44.2 |
17.0 |
39.1 |
21.2 |
28.8 |
42.9 |
27.8 |
26.7 |
43.5 |
24.6 |
57.7 |
22.2 |
29.4 |
採用計画あり |
まだ申し込んでいない |
8.4 |
8.7 |
7.2 |
2.3 |
8.0 |
4.4 |
9.1 |
7.4 |
0.0 |
11.1 |
4.2 |
10.9 |
5.1 |
7.7 |
11.1 |
6.5 |
一部申し込んでいる |
0.0 |
6.3 |
3.8 |
2.3 |
2.3 |
0.0 |
6.1 |
3.6 |
4.8 |
5.6 |
4.7 |
2.2 |
2.9 |
0.0 |
6.7 |
4.1 |
全部申し込んだ |
0.0 |
40.0 |
26.9 |
18.6 |
28.4 |
13.0 |
30.3 |
27.4 |
9.5 |
38.9 |
26.7 |
15.2 |
19.6 |
3.8 |
17.8 |
23.1 |
その他、理由なし |
0.0 |
2.5 |
1.1 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
0.9 |
0.0 |
0.0 |
1.0 |
4.3 |
1.4 |
0.0 |
0.0 |
1.1 |
小 計 |
8.4 |
57.5 |
39.0 |
23.2 |
38.7 |
17.4 |
45.5 |
39.3 |
14.3 |
55.6 |
36.6 |
32.6 |
29.0 |
11.5 |
35.6 |
34.8 |
このことから、前回調査に比べ企業の積極的な採用意欲が感じられる。
新卒者の求人状況を業種別にみると、鉱業は、「採用せず」が58.3%と前年調査を15.5ポイント上回っている。建設業は、「採用計画あり」が57.5%と前年調査を1.9ポイント上回っており例年のとおり旺盛な採用意欲が感じられる。製造業は、「採用計画あり」が39.0%と前年調査を2.4ポイント上回り、「採用せず」が30.8%と前年調査を5.9ポイント下回っており年々「採用計画あり」の割合が増えている。卸売業は、「採用計画あり」が23.2%と前年調査を9.4%下回り、「採用せず」が32.6%と前年調査を8.7ポイント上回った。小売業は、「採用計画あり」が38.7%と前年調査を9.7ポイント上回った。運輸業は、「採用せず」が43.5%と前年調査を12.7ポイント下回った。サービス業は「採用計画あり」が45.5%と前年調査を9.9ポイント上回った。
最後に、図2は、来春採用を計画している企業において、新規学卒者の予想基本給を今年度の実績と対比して表しており、図3はそれらの伸び率を表している。高卒では、男子が141,283円で今年度比1.3%(前年調査1.4%)の増加、女子が133,482円で△0.6%(同0.1%)の減少が見込まれている。大卒では、男子が173,685円で3.3%(同2.2%)の増加、女子が171,257円で5.8%(同3.1%)の増加が見込まれている。また、短大卒、高専卒、専門学校などのその他では、男子が158,754円で3.9%(同9.0%)の増加、女子が154,578円で9.3%(同2.0%)の増加が見込まれている。
訂 正 と お 詫 び |
来春の新規学卒者予想初任給のうち、女子のその他の金額が間違っておりました。訂正してお詫びいたします。なお、前年比については訂正はありません。 |
誤 |
正 |
また、短大卒、高専卒、専門学校などのその他では、男子が158,754円で3.9%(同9.0%)の増加、女子が171,257円で9.3%(同2.0%)の増加が見込まれている。
|
また、短大卒、高専卒、専門学校などのその他では、男子が158,754円で3.9%(同9.0%)の増加、女子が154,578円で9.3%(同2.0%)の増加が見込まれている。
|
以上のとおり、高卒の女子で前年を下回ったが、それ以外ではすべて前年を上回った。その中で大卒の女子と短大卒、高専卒、専門学校卒などその他の女子の伸びが特大きく、女子の採用に積極的であることがうかがわれる。
|