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特集●平成9年度上期県内法人企業設備投資計画調査結果

投資額 前年同期比プラスに
内部留保による資金調達大幅に増加


 この調査は、当産業情報センターが岩手県商工労働部の委託を受けて半年ごとに実施しているもので、今回は平成9年度上期分(9年4月〜9年9月)にあたり、調査時点は7月8日現在である。
 調査対象企業は、建設業、製造業では従業員80人以上、卸売業、小売業、運輸業、サービス業は40人以上の主要法人企業500社。回収調査票から記入不備分を除いた回答企業数は224社で、有効回収率は44.8%だった。この業種別内訳は、建設業35社、製造業90社、卸売業20社、小売業30社、その他(運輸・サービス業)49社となっている。

 

投資額 前年同期比27.0%増

 表1は、回答のあった224企業の業種別設備投資動向(支払ベース)を示している。これによると平成8年度下期における設備投資計画の総額は143億8,086万円で、前年同期実績比27.0の増加となったが、対前期比では△12.3%の減少見通しとなっている。
 業種別にみると、建設業では、前年同期比4.5%の増加見通しとなっている。これは少数の企業による新社屋建設等の大型投資によるものであり、それらをのぞけば受注減少傾向からくる景況感悪化予想を反映し、設備投資に対する姿勢は依然慎重と思われる。
製造業全体では、業種によりバラツキがあるものの前年同期比30.0%の増加、前期比6.5%の増加と回復の兆しが見え始めている。個別業種ごとにみると、前年同期比プラスとなったのは、食料品、繊維、化学、金属、電気、精密である。このうち、化学は生産能力増大のための新工場建設及びそれに伴う機械・装置への大型投資のため前年比225.8%の大幅増加となった。金属も生産性向上、設備補修の目的で機械・設備への新規、更新投資があり前年同期比647.4%の大幅増加となった。また電気は、移動体通信機器向けを中心に高操業を継続しており、積極的な投資姿勢がうかがえる。一方、前年同期比マイナスとなったのは、木材・木製品、パルプ・紙・紙加工、窯業・土石、鉄鋼、出版・印刷、機械である。このうち機械では、前年度、誘致企業の新工場建設等大規模投資があり、その反動で△45.1%の大幅な落ち込みとなった。
 卸売業では、車輌等の設備更新が殆どで目立った動きは見られず、前年同期比△9.6%の減少、前期比では6.4%の増加となっている。
  小売業では、新店舗・営業所の建設、営業用土地取得等、積極的投資がみられ、前年同期比150.9%の大幅な増加となり、前期に引き続き高水準で推移する見通しとなっている。
 その他(運輸・サービス業)全体では、前年同期比△24.2%、前期比△71.7%の大幅な減少見通しとなっている。これは、運輸業での倉庫・営業所の新設、サービス業、特にリゾート産業における大規模施設新設等の大型投資が消費税改正前の前期に集中したことが要因と考えられる。
 

表1 業種別設備投資動向   (単位:千円、%)

年度   7年度下期 8年度上期 8年度下期 9年度上期
業種 企業数 投資額 投資額 前期比 投資額 前期比 前年比 投資額 前期比 前年比
全産業 224 19,868,123 11,321,839 -43.0 16,397,702 44.8 -17.5 14,380,857 -12.3 27.0
建設業 35 1,945,365 1,210,727 -37.8 1,171,711 -3.2 -39.8 1,265,161 8.0 4.5
製造業 90 14,013,760 7,709,607 -45.0 9,406,979 22.0 -32.9 10,019,898 6.5 30.0
食料品 16 1,758,211 174,432 -90.1 791,778 353.9 -55.0 316,357 -60.0 81.4
繊維 4 9,065 7,628 -15.9 60,000 686.6 561.9 18,746 -68.8 145.8
木材・木製品 7 422,723 733,815 73.6 257,714 -64.9 39.0 498,575 93.5 -32.1
パルプ・紙・紙加工 3 284,277 1,073,035 277.5 1,401,297 30.6 392.9 1,065,121 -24.0 -0.7
化学 5 1,250,309 797,512 -36.2 1,339,818 68.0 7.2 2,598,149 93.9 225.8
窯業・土石 6 1,004,556 1,766,635 75.9 1,826,123 3.4 81.8 1,629,225 -10.8 -7.8
鉄鋼 5 221,259 223,794 1.1 194,607 -13.0 -12.0 165,551 -14.9 -26.0
出版・印刷 6 1,870,464 538,847 -71.2 413,037 -23.3 -77.9 274,245 -33.6 -49.1
金属 6 3,175 6,150 93.7 26,150 325.2 723.6 45,965 75.8 647.4
機械 11 3,099,426 1,156,858 -62.7 1,259,515 8.9 -59.4 634,787 -49.6 -45.1
電気 16 3,933,235 1,150,932 -70.7 1,619,258 40.7 -58.8 2,541,708 57.0 120.8
精密 5 157,060 79,969 -49.1 217,682 172.2 38.6 231,469 6.3 189.4
卸・小売・他 99 3,909,007 2,401,505 -38.6 5,819,012 142.3 48.9 3,095,798 -46.8 28.9
卸 売 20 553,062 282,901 -48.8 240,390 -15.1 -56.5 255,874 6.4 -9.6
小 売 30 1,561,434 704,560 -54.9 1,788,069 153.8 14.5 1,767,614 -1.1 150.9
その他(運輸・サービス) 49 1,794,511 1,414,044 -21.2 3,790,553 168.1 111.2 1,072,310 -71.7 -24.2

 

「機械・装置」が減少

 図1は、設備投資の内容についてみたものである。
 全業種では、「機械・装置」が53.1%(前年同期調査72.1%)、「建物」が24.2%(同17.0%)、「構築物」が15.4%(同3.1%)、「土地」が7.3%(同7.8%)の順となっている。「機械・装置」の割合が減少し、その分「建物」、「構築物」の割合が増加した。また、「土地」への投資は依然低調で慎重な姿勢を崩していない。
 業種別にみると、建設業では、前年9割を占めた「機械・装置」も割合が2割弱と大幅に減少し、反対に「建物」の割合が増加しトップとなった。 製造業では、「機械・装置」の占める割合が63.9%(同79.1%)と減少しており、その分「構築物」への投資割合が増加し順位に変動がみられた。 卸売業では、「建物」の占める割合が大幅に増加し、その他は軒並み減少している。 小売業・その他(運輸・サービス業)では前年同期とほぼ同様の割合となっているが、「建物」の割合が「機械・装置」を僅かに上回りトップとなっている。
 

設備投資計画調査

 

「内部保留」大幅増加

 次に、資金計画(設備投資資金の調達計画)についてみたのが図2である。全業種では、「内部留保」が63.6%(前年同期調査21.3%)、「借入金」が28.2%(同48.2%)、「その他」が6.8%(同29.2%)、「増資」が1.3%(同1.3%)の順となっており、「内部留保」の割合が大幅に増加しトップとなり、「借入金」と順位が入れ替わった。景況の先行き不透明感から、「借入金」に依存しない慎重な投資行動が顕著にあらわれている。
 業種別にその内訳をみると、建設業では、「内部留保」が37.8%(同30.5%)と増加し、「借入金」の割合が39.6%(同58.4%)と大幅に減少した。 製造業でも、「内部留保」の割合が76.1%(同16.5%)と大幅に増加し、「借入金」の割合が18.1%(同45.3%)と減少した。 卸売業でも同様に「内部留保」の割合が大幅に増加し、その分「借入金」の割合が減少した。 小売業・その他(運輸・サービス業)では、「借入金」の依存度が59.1%ともっとも高く前期と比べても増加したことが特徴的である。
 

設備投資計画調査

 

例年通りの投資目的

企業における設備投資の目的をみたのが図3(建設業、製造業)と図4(非製造業)である。
 建設業、製造業についてみると、「設備投資せず」が20.1%ともっとも多く、以下「設備補修」16.4%、「生産力増大」と「生産性向上」が同率で15.9%の順となっている。
 非製造業でも、「設備投資せず」が40.0%ともっとも多く、以下「売上高増大」20.8%、「店舗等補修」6.7%と、ほぼ例年同様の割合となっているが、「その他」が17.5%と増加しており投資目的の多様化がみられる。 
 

設備投資計画調査
 

設備投資計画調査

 

売上げ、減少の見通し

 最後に、回答企業における総売上高の実績と平成7年度上期の予想についてみたのが表2である。
 全業種では、前年同期比△7.0%、前期比△13.3%と何れも減少予想となっている。
 これを業種別にみると、建設業では、例年の予想と同様に前期比△22.6%、前年同期比でも△3.5%の減少と特に官公庁工事の受注減少を反映した予想となっている。では、設備投資の動向と同様に前年比△3.4%の減少予想となっている。 製造業全体では、前年同期比△16.6%の減少予想であるが、個別の業種では、電気、鉄鋼が二桁増の予想と、好調さをうかがわせるなど、業種個々にはバラツキがみられる。非製造業では、前年同期比8.7%と増加予想となっており、前期比△9.6%の減少と消費税引き上げ前の駆け込み需要の影響がみられるものの堅調な推移を見込んでいる。
 

表2 総売上高の実績と見通し   (単位:千円、%)

年度   7年度下期 8年度上期 8年度下期 9年度上期
業種 企業数 純売上高 純売上高 前期比 純売上高 前期比 前年比 純売上高 前期比 前年比
全産業 224 680,459,054 576,798,893 -15.2 618,815,306 7.3 -9.1 536,567,832 -13.3 -7.0
建設業 35 71,721,514 65,328,092 -8.9 81,487,336 24.7 13.6 63,070,220 -22.6 -3.5
製造業 90 395,805,350 325,564,361 -17.7 313,797,849 -3.6 -20.7 271,421,288 -13.5 -16.6
食料品 16 38,013,557 34,211,772 -10.0 35,720,411 4.4 -6.0 34,641,734 -3.0 1.3
繊維 4 85,478,445 2,832,821 -96.7 2,718,754 -4.0 -96.8 2,748,722 1.1 -3.0
木材・木製品 7 11,891,481 13,220,331 11.2 14,308,850 8.2 20.3 13,168,300 -8.0 -0.4
パルプ・紙・紙加工 3 9,828,928 8,354,565 -15.0 8,324,914 -0.4 -15.3 8,389,189 0.8 0.4
化学 5 21,718,187 19,520,120 -10.1 23,249,889 19.1 7.1 14,849,130 -36.1 -23.9
窯業・土石 6 56,881,918 45,519,938 -20.0 59,203,624 30.1 4.1 45,809,448 -22.6 0.6
鉄鋼 5 14,228,508 13,796,028 -3.0 15,276,924 10.7 7.4 15,709,853 2.8 13.9
出版・印刷 6 10,998,151 11,769,805 7.0 11,664,252 -0.9 6.1 11,701,231 0.3 -0.6
金属 6 67,537,629 95,973,168 42.1 11,664,252 -38.2 -12.2 36,343,310 -38.7 -62.1
機械 11 32,136,348 38,109,609 18.6 59,282,232 -10.8 5.8 37,093,948 9.1 -2.7
電気 16 40,972,054 35,702,640 -12.9 33,999,166 23.4 7.6 43,925,447 -0.3 23.0
精密 5 6,120,144 6,553,564 7.1 44,071,744 -8.8 -2.3 7,041,076 17.8 7.4
卸・小売・他 99 212,932,190 185,906,440 -12.7 223,530,121 20.2 5.0 202,076,324 -9.6 8.7
卸 売 20 61,663,168 57,523,948 -6.7 677,711,392 17.7 9.8 58,777,419 -13.2 2.2
小 売 30 104,281,122 89,262,800 -14.4 107,530,586 20.5 3.1 102,502,616 -4.7 14.8
その他(運輸・サービス) 49 46,987,900 39,119,692 -16.7 48,288,143 23.4 2.8 40,796,289 -15.5 4.3

 

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