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特集●平成9年度金融借入実態調査結果
 

厳しい経営環境下の県内金融借入事情


 
 この調査は、当センターが毎年実施しているもので、調査対象企業は毎月実施している県内経営動向調査先の 1,650企業である。調査時点は平成10年1月31日現在で、回収サンプル数は、 709企業(有効回収率43.0%)であった。回答企業の業種別内訳は、建設業102、製造業262、卸・小売業(飲食業含む)245、運輸・サービス業100となっている。
 


表1 事業資金の借入先(単位:件、%)
借入機関・業種 全業種 建設業 製造業 卸・小売業(飲食業含む) サービス業 運輸業・その他
件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率
銀行 470 85.3(81.1) 73 86.9 158 79.4 176 92.6 44 89.8 19 65.5
地 元 銀 行 424 77.0(73.0) 68 81.0 145 72.9 156 82.1 39 79.6 16 55.2
地元以外の銀行 46 8.3(8.1) 5 6.0 13 6.5 20 10.5 5 10.2 3 10.3
政府系金融機関 289 52.5(54.7) 34 40.5 109 54.8 106 55.8 23 46.9 17 58.6
信用金庫・信用組合 135 24.5(28.4) 26 31.0 43 21.6 50 26.3 9 18.4 7 24.1
県の制度融資 67 12.2(15.7) 11 13.1 34 17.1 19 10.0 1 2.0 2 6.9
市町村の制度融資 56 10.2(9.5) 6 7.1 16 8.0 24 12.6 7 14.3 3 10.3
ノンバンク 4 0.7( - ) 1 3.2 0 - 3 1.6 0 - 0 -
その他 20 3.6(3.1) 1 7.6 12 6.0 2 1.1 2 4.1 3 10.3
借入ありと回答した企業数合計 551 81.7(81.5) 84 87.5 199 83.7 190 77.3 49 79.7 29 87.9

(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )は前年度比率。

 

銀行への借入依存強まる

 表1は、過去3年間の事業資金の借入の有無および借入先についてみたものである。借入したことが「ある」と答えた企業は全体で81.1%と、前回調査の81.7%とほぼ同様の数字となった。
 これを業種別にみると、卸・小売業80.0%、運輸・サービス業80.0%とそれぞれ前回調査を上回った反面、建設業86.3%、製造業80.5%と前回調査を下回っている。
 次に事業資金の借入先についてみると、全体では例年と同様に「銀行」が最も多く、以下「政府系金融機関(国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫)」、「信用金庫・信用組合」、「県の制度融資」、「市町村の制度融資」、「ノンバンク」の順となっている。前回調査と比較すると、「銀行」、「政府系金融機関」、「県の制度融資」「市町村の融資制度」、「信用金庫・信用組合」、「ノンバンク」が前回調査を下回ったのに対し、その他が前回調査を上回った。  以下「政府系金融機関(国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫)」、「信用金庫・信用組合」、「県の制度融資」、「市町村の制度融資」、「ノンバンク」の順となっている。前回調査と比較すると、「銀行」、「政府系金融機関」、「県の制度融資」「市町村の融資制度」、「信用金庫・信用組合」、「ノンバンク」が前回調査を下回ったのに対し、その他が前回調査を上回った。  また、従業員規模別に借入先の特徴をみると、「銀行」、「政府系金融機関」、「信用金庫・信用組合」の順位は変わらないものの、従業員数が多くなるにつれて銀行の割合が高くなり、逆に、県や市町村の制度融資の割合は低くなる傾向にある。

 

「経営業績悪化」がトップ

 次に、過去3年間に借入れしなかった理由を調査したところ、最も多かったのは例年通り「必要なし」で、85.5%と前回調査の88.4%を2.9ポイント下回った。また、「必要だったが借りなかった」企業の理由の第1位は、「経営業績の悪化」で38.9%を占め、次いで「担保物件がなかった」が16.7%、「保証人がいなかった」が11.1%と続いている。


 

 

設備資金、機械・装置がトップ

 図1は、借入する事業資金のうち設備資金と運転資金の使途についてみたものである。設備資金では、「機械・器具・機器・備品・車輌」が63.4%とトップで、以下「工場・店舗の設備、修理」36.8%、「建物の取得」24.8%、「土地の取得」22.7%、「従業員福利施設の設置」5.7%と続いている。
 運転資金では、「買掛金・手形の決裁」が58.3%とトップで、「給与・賞与の支払」40.1%、「諸経費の支払・納税」38.4%、「商品・原材料の現金買」 33.1%、「旧債返済、肩代り資金」10.6%と続いている。
 

表2 事業資金の借入予定先(単位:件、%)
借入機関・業種 全業種 建設業 製造業 卸・小売業(飲食業含む) サービス業 運輸業・その他
件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率
銀行 318 79.5(73.2) 54 91.5 101 71.6 122 83.0 29 85.3 12 63.2
地 元 銀 行 287 71.8(68.0) 51 86.4 94 66.7 106 72.1 26 76.5 10 52.6
地元以外の銀行 31 7.8(5.2) 3 5.1 7 5.0 16 10.9 3 8.8 2 10.5
政府系金融機関 185 46.3(44.6) 17 28.8 69 48.9 71 48.3 19 55.9 9 47.4
信用金庫・信用組合 75 18.8(21.1) 27 45.8 25 17.7 7 4.8 12 35.3 4 21.1
県の制度融資 47 11.8(13.5) 5 8.5 26 18.4 11 7.5 4 11.8 1 5.3
市町村の制度融資 21 5.3(5.9) 2 3.4 7 5.0 11 7.5 0 - 1 5.3
ノンバンク 0 0.0( - ) 0 - 0 - 0 - 0 - 0 -
その他 10 2.5(2.6) 0 - 6 4.3 3 2.0 0 - 1 5.3

借入ありと回答した企業数合計

400 58.8(58.2) 59 61.5 141 58.8 147 59.5 34 53.1 19 57.6

(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )は前年度比率。

 

約6割の企業が借入を予定

 表2は、将来の事業資金の借入予定先についてみたものである。「近い将来借入をする予定がある」と答えた企業は、全体の59.0%と前回調査とほぼ同様の結果となった。借入機関別では、銀行が79.6%とトップで、政府系金融機関が46.3%、以下信金・信組、県の制度融資、市町村の制度融資の順となっている。
 業種別にみると、建設業では、唯一銀行の占める割合が9割を越えている。製造業では、全体に比べ県の制度融資の割合が高い。卸・小売業では、市町村の制度融資の割合がもっとも高く、県の制度融資の割合がもっとも低い。サービス業では、政府系金融機関の割合が全体に比べ高く、運輸業・その他では銀行の割合が低い点が特徴的である。
 
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借入額、ほぼ例年通り

 図2は、借入予定額についてみたものである。全体では、「3,000万円以上」の占める割合が42.1%と前回調査とほぼ同様の結果となった。  業種別にみると、製造業、卸・小売業、運輸業・その他で借入金額は増加傾向にあり、サービス業、建設業で減少傾向にある。
 また、従業員規模別の借入予定額をみた場合、10人超の企業の70.9%が1,000万円以上の借入を予定しており、20人超では81.1%、50人超では 95.6%と借入金額は従業員数に比例して増加傾向にある。

 

認識度高い信用保証制度

 企業が借入れする場合、信用面を補完する制度として岩手県信用保証協会の信用保証制度がある(平成9年1月末現在の保証債務残高1,973億円、前年同月比118.3%)。今回も保証制度に関する調査を実施したところ、「信用保証協会を知っている」と答えた企業は全業種で93.6%、業種別でも軒並み9割を超えた。次に保証制度の利用状況についてみると、全体では回答企業の54.5%が「利用したことがある」としており、業種別では、サービス業が64.1%とトップで、製造業、運輸業・その他、建設業、卸・小売業の順となっている。
 表3は信用保証制度を利用した企業が、この制度をどのように評価しているかをみたものである。「良い制度だと思う」、「機能が銀行と連動」、「銀行の窓口を広くしている」等、例年良い評価が多い反面、「保証料が高い」、「担保の提供を求められた」、「審査が厳しい」などの評価も散見された。
 

表3 信用保証協会に対する評価 (単位:件、%)
項   目 件数 構成比
機能が銀行と連動している 206 56.1
保証料が高い 127 30.0
良い制度だと思う 121 33.0
担保の提供を求められた 41 11.2
銀行の窓口を広くしてくれている 32 8.7
審査が厳しい 32 8.7
貸付決定までの時間がかかりすぎる 29 7.9
手続きが簡単 22 6.0
手続きが難しい 12 3.3
保証料が安い 4 1.1
その他 13 3.5
回答企業数合計 367  /

(注)重複回答のため合計は100%を超える。


 

経営指導企業、4社に1社の割合

 

 図3は、金融借入実態調査に関連するという理由から、本調査と併せて実施した商工会議所、商工会の経営指導員の利用状況についてみたもので、企業がどのような内容の指導を受けたかを表したものである。
 指導を受けたことのある企業は、回答企業中25.8%とほぼ4社に1社の割合となっている。指導内容別にみると、「金融」が52.0%と最も多く、以下、「経営」、「経理」、「税務」、「労務」の順となっている。また経営指導内容を従業員規模別にみると、従業員が多くなるにつれ「金融」、「経理」から「経営」、「労務」へシフトしていく傾向にあり、10人超の企業では、「経営」が5割を超えトップとなっている。

 

公的制度融資、融資条件に不満

 

 図4は、県及び市町村の制度融資について現状で良いかどうか、良くない場合には、その理由を挙げてもらったものである。
 回答企業中で「現状で良くない」とした企業は28.5%で、前回調査を僅かに上回った。現状で良くない理由は、「融資条件が厳しい」が47.9%と最も多く、「手続が煩わしい」、「1件当たりの貸付限度額が低い」、「金利が高い」の順となっている。
 全体に、制度融資についての評価は高いものの、融資条件、貸付限度額、手続等に対する不満も多く、本当に必要としている企業に対する融資条件の緩和など、改善が望まれている。

 

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