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特集●平成8年度下期県内法人企業設備投資計画調査結果
 

県内企業の設備投資計画
業種による格差鮮明に


 
 この調査は、当産業情報センターが岩手県商工労働部の委託を受けて半年ごとに実施しているもので、今回は平成8年度下期分(8年10月〜9年3月)にあたり、調査時点は1月6日現在である。
 調査対象企業は、建設業、製造業では従業員80人以上、卸売業、小売業、運輸業、サービス業は40人以上の主要法人企業500社。回収調査票から記入不備分を除いた回答企業数は223社で、有効回収率は44.6%だった。この業種別内訳は、建設業33社、製造業86社、卸売業23社、小売業28社、その他(運輸・サービス業)53社となっている。

 

投資額 前年比の8.3%減

 表1は、回答のあった223企業の業 種別設備投資動向(支払ベース)を示している。これによると平成8年度下期における設備投資計画の総額は143億6,230万円で、これを前年同期実績に比べてみると、回復基調とはいえ先行き不透明な県内景況を反映し△8.3%の減少となったが、一方、対前期比では△1.2%と微減にとどまった。
 業種別にみると、建設業では、前年同期比△70.6%と大幅な減少となっている。これは、公共工事契約発注が高水準で推移している反面、民間需要が低迷しているため、売上減による収益の悪化を余儀なくされ、設備投資マインドの後退した企業が増加したためと思われる。
 製造業では、一部業種に動きがみられるものの全体では前年同期比△13.7%と低調な投資計画となっている。個別業種ごとにみると、前年比マイナスとなったのは、食料品、木材・木製品、出版・印刷、金属、機械である。このうち出版・印刷で△91.6%と大幅に減少しているのは、前年度、工場建設による大規模な設備投資があった反動減によるものである。また食料品、木材・木製品も同様に前年度の設備投資の反動減である。一方、前年比プラスとなったのは、繊維、パルプ・紙・紙加工、化学、窯業・土石、鉄鋼、電気、精密である。このうち、繊維は生産性向上のための機械装置への投資のため前年比460%の大幅増となった。また精密は時計・同部品が国内向けの新製品効果に支えられ高操業を維持しており、生産能力増大目的の投資が継続している。電気は、PHS事業向け交換機の受注増、電気音響機器の好調等により高操業を継続しており、積極的な投資姿勢により好調に推移している。鉄鋼は、業者間によりばらつきがあるものの、誘致企業の設備新設により前年比増となった。
 卸売業では、車輌の更新が殆どであるが、販売促進のための店舗、営業所新築、既存設備の効率化のための駐車場増設を計画している企業もあり、前年同期比94.6%の大幅増となっている。
 小売業では、個人消費の堅調な推移により店舗、営業所の新築、営業用土地取得等、積極的投資が散見される反面、今期の投資を見合わせる業者も多く、全体では前年同期比△13.7%の減少となっている。
 その他(運輸・サービス業)では、前年同期比184.1%の大幅増となっている。運輸業では、過積載対応のための車輌購入は一段落したが、営業所の新設等大規模な投資があり増加要因となった。サービス業では、営業用車輌の更新を中心とした投資傾向が窺われるが、リゾート産業における大規模な施設新設が大幅増加の要因に寄与した。
 

表1 業種別設備投資動向(単位:千円、%)
  企業数 6年度下期 7年度上期 7年度下期 8年度上期
投資額 投資額 前年比 投資額 前期比 前年比 投資額 前期比 前年比
全業種 223 10,340,277 15,662,848 51.5 14,541,327 -7.2 40.6 14,362,302 -1.2 -8.3
建設業 33 1,800,473 2,405,437 33.6 1,191,583 -50.5 -33.8 707,223 -40.6 -70.6
製造業 86 6,985,872 10,983,631 57.2 8,654,173 -21.2 23.9 9,481,038 9.6 -13.7
食料品 13 113,427 1,707,203 1,405.1 275,013 -83.9 142.5 856,861 211.6 -49.8
繊 維 5 114,315 9,065 -92.1 22,212 145.0 -80.6 50,760 128.5 460.0
木材・木製品 7 102,285 393,099 284.3 735,917 87.2 619.5 204,191 -72.3 -48.1
パルプ・紙・紙加工 2 344,712 278,527 -19.2 459,482 65.0 33.3 734,874 59.9 163.8
化 学 5 1,749,662 1,250,309 -28.5 797,512 -36.2 -54.4 2,300,338 188.4 84.0
窯業・土石 5 429,114 302,453 -29.5 601,828 99.0 40.2 446,980 -25.7 47.8
鉄 鋼 5 33,447 29,377 -12.2 354,964 1,108.3 961.3 73,989 -79.2 151.9
出版・印刷 4 9,270 2,324,712 25,077.8 752,082 -67.6 8,013.1 195,958 -73.9 -91.6
金 属 7 82,279 152,677 85.6 168,727 10.5 105.1 108,000 -36.0 -29.3
機 械 12 1,634,590 1,459,980 -10.7 1,278,124 -12.5 -21.8 491,829 -61.5 -66.3
電 気 14 1,955,520 2,750,696 40.7 2,830,815 2.9 44.8 3,089,263 9.1 12.3
精 密 7 417,251 325,533 -22.0 377,497 16.0 -9.5 928,085 145.9 185.1
卸売・小売・他 104 1,553,932 2,273,780 46.3 4,695,571 106.5 202.2 4,174,041 -11.1 83.6
卸 売 23 182,301 246,962 35.5 276,722 12.1 51.8 480,515 73.6 94.6
小 売 28 563,772 1,043,811 85.1 613,747 -41.2 8.9 900,585 46.7 -13.7
その他(運輸・サービス) 53 807,859 983,007 21.7 3,805,102 287.1 371.0 2,792,941 -26.6 184.1

 

投資内容、業種によりバラツキ

 図1は、設備投資の内容についてみたものである。
 全業種では、「機械・装置」が59.6%(前年同期調査59.4%)、「建物」が23.6%(同20.2%)、「構築物」が10.2%(同14.1%)「土地」が6.6%(同6.4%)の順と順位、割合ともほぼ前年と同様となっている。
 業種別にみると、建設業では、前年6割近くを占めた「機械・装置」が3割弱と大幅に減少し、反対に「土地」が増加しトップとなった。製造業では、「機械・装置」の占める割合が75.6%と増加しており、不動産への投資割合は減少傾向にある。卸売業では、「建物」の占める割合がやや減少し「機械・装置」が倍増している。小売業・その他も卸売業とほぼ同様の割合となっているが、「構築物」の割合が高い点が特徴的である。  

設備投資計画調査

 

非製造業で借入依存強まる

 次に、資金計画(設備投資資金の調達計画)についてみたのが図2である。全業種では、「借入金」が57.0%(前年同期調査54.3%)、「内部留保」32.5%(同32.8%)、「その他」9.7%(同12.8%)、増資(同0.8%)の順となっており、前年同様の資金調達内容となっているが、「借入金」への依存度は増加傾向にある。
 業種別にその内訳をみると、建設業では、「借入金」の割合が前年度の78.3%から26.5%と大幅に減少しその分内部留保が55.1%と増加しトップとなった。製造業では、前年どおりの資金計画となっており、全業種の平均とほぼ同様の割合となっている。卸売業では「借入金」の依存度が91.4%ともっとも高く昨年に比べても大幅に増加した。小売業・その他も同様に「借入金」の依存度が増加し約7割を占めたことが特徴的である。

設備投資計画調査

 

「投資せず」非製造業で増加

企業における設備投資の目的をみたのが図3(建設業、製造業)と図4(非製造業)である。
 建設業、製造業についてみると、「生産性向上」18.3%、「設備補修」16.7%、「生産力増大」14.5%と上位3項目は例年どおり変化がない。また「設備投資せず」も17.7%とほぼ前年同様の数値となった。
 非製造業でも、「売上高増大」17.4%、「店舗等補修」7.0%と、例年同様この2項目が上位を占めているが、「その他」が増加しており投資目的の多様化がみられる。また「設備投資せず」は44.3%と、前年同期の38.1%をやや上回った。 

設備投資計画調査
  

設備投資計画調査

 

売上げ、増加の見通し

 最後に、回答企業における総売上高の実績と平成7年度上期の予想についてみたのが表2である。
 全業種では、7年下期実績前年比15.4%に対し、今回の調査では前年同期比6.3%の増加予想となっている。
 これを業種別にみると、建設業では、設備投資の動向と同様に前年比△3.4%の減少予想となっている。製造業全体では、3.1%の増加予想であるが、個別の業種では、木材・木製品、鉄鋼、金属、電気が二桁増の予想と、好調さを窺わせる。非製造業では、前年比13.3%増と設備投資の動向を反映しているが、業種別にみると、運輸・サービス業が前年比47.6%と大幅増を予想している反面、卸売業で△5.6%とマイナスの予想となっている。
 

表2 総売上高の実績と見通し (単位:千円、%)
  企業数 6年度下期 7年度上期 7年度下期 8年度上期
投資額 投資額 前年比 投資額 前期比 前年比 投資額 前期比 前年比
全業種 223 434,005,174 500,885,087 15.4 494,051,710 -1.4 13.8 532,230,663 7.7 6.3
建設業 33 62,681,970 73,404,835 17.1 58,686,250 -20.1 -6.4 70,922,448 20.9 -3.4
製造業 86 195,071,623 226,108,646 15.9 237,397,004 5.0 21.7 233,070,488 -1.8 3.1
食料品 13 31,206,435 32,654,867 4.6 33,032,299 1.2 5.9 33,185,264 0.5 1.6
繊 維 5 4,079,906 3,911,842 -4.1 3,637,365 -7.0 -10.8 3,622,440 -0.4 -7.4
木材・木製品 7 10,708,124 11,858,591 10.7 13,543,427 14.2 26.5 13,714,652 1.3 15.7
パルプ・紙・紙加工 2 9,071,771 8,939,575 -1.5 7,454,083 -16.6 -17.8 7,392,427 -0.8 -17.3
化 学 5 16,450,259 21,827,884 32.7 19,747,099 -9.5 20.0 18,502,596 -6.3 -15.2
窯業・土石 5 11,272,221 13,243,373 17.5 11,629,065 -12.2 3.2 11,714,438 0.7 -11.5
鉄 鋼 5 2,274,788 1,990,963 -12.5 2,378,945 19.5 4.6 2,336,614 -1.8 17.4
出版・印刷 4 4,527,767 4,559,559 0.7 4,728,902 3.7 4.4 4,713,613 -0.3 3.4
金 属 7 7,104,811 7,756,588 9.2 7,441,122 -4.1 4.7 9,261,519 24.5 19.4
機 械 12 23,199,056 27,503,245 18.6 35,495,085 29.1 53.0 26,030,477 -26.7 -5.4
電 気 14 55,791,516 72,044,397 29.1 78,182,981 8.5 40.1 81,275,651 4.0 12.8
精 密 7 19,384,969 19,817,762 2.2 20,126,631 1.6 3.8 21,320,797 5.9 7.6
卸売・小売・他 104 176,251,581 201,371,606 14.3 197,968,456 -1.7 12.3 228,237,727 15.3 13.3
卸 売 23 59,407,653 69,006,802 16.2 61,932,696 -10.3 4.3 65,144,019 5.2 -5.6
小 売 28 62,752,607 71,605,349 14.1 65,565,429 -8.4 4.5 73,396,829 11.9 2.5
その他(運輸・サービス) 53 54,091,321 60,759,455 12.3 70,470,331 16.0 30.3 89,696,879 27.3 47.6

 

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