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特集●平成9年度新卒者の採用予定および初任給調査結果
 

採用予定、初任給ともに低迷


 県内景況は、回復基調に足踏みの状態がみられ、今後の見通しが楽観を許さない環境にあり、労働需給は依然緩和傾向にある。
 このような状況下、当産業情報センターでは、この春新卒者の採用を予定している企業を対象に、採用状況および初任給について調査を行った。その結果、新卒者の確保は昨年と同様に厳しく、「計画通り採用できる」とした企業は、57.2%と前年調査(65.2%)を下回った。
 また、新卒者の初任給見込額の伸び率も低率であり伸び悩んでいる。

 この調査は、今春高校の新卒者の採用を予定している企業900社を対象として平成8年12月1日から12月15日にわたり実施したもので、回答企業数は480社(有効回収率53.3%)となっている。回答企業の内訳は、鉱業・建設業151社、製造業178社、卸売業30社、小売業50社、運輸・サービス業71社である。

 

採用状況 昨年を下回る

 表1は企業における新卒者採用予定に対する確保の状況についてみたものである。全業種平均をみると、「概ね計画通り採用できる」とする企業割合は57.2%と前年調査の65.2%を8.0ポイント下回っている。反面、「計画通り採用できない」とする企業割合は26.8%と前年調査の22.4%を4.4ポイント上回っており、特に「募集人員に満たない」が9.2%(前年同期7.6%)、「人数・人材のどちらも確保できない」が9.2%(同6.0%)と前年調査を上回っている。また、「採用予定なし」と回答した企業も16.0%(同12.4%)と、前年調査を上回っており、県内企業の採用状況は、景気の足踏み、またそれに伴う雇用の抑制傾向及び景気の先行きが楽観を許されない環境にあることなど、厳しい状況となっている。そのなかで地元志向もあって今春卒業の県内高校生の県内就職率は、80.4%(平成8年11月末現在、県職業安定課調べ、(前年調査79.6%)と高い比率で推移している。
 次に、表2の新卒者の採用方法についてみると、各項目とも例年とほぼ同じ構成比率であり、「学校からの紹介」が71.0%とトップで、各企業ともこれが新卒者の確保の大きめな決め手となっていることがうかがえる。また、業種別にみると、建設業では「職安からの斡旋」、小売業では「縁故」,「求人広告」と回答した企業が比較的多いのも目につく。
 

表1 新卒者の採用状況     (単位:%)
項目 採用予定あり 採用予定なし
概ね計画通り採用できる 計画通り採用できない 人数・人材が足りている 採用したいが控えている その他
募集人員に満たない 必要とする人材が確保できない

人数・人材のどちらも確保できない

その他
鉱業・建設業 50.3 9.4 12.8 11.0 0.0 7.7 7.7 1.1
製造業 56.2 11.8 5.6 9.0 0.0 6.7 9.0 1.7
卸売業 67.6 3.0 3.0 11.8 3.0 5.8 5.8 0.0
小売業 69.6 8.9 7.1 3.7 0.0 1.8 8.9 0.0
運輸・サービス業 61.6 5.8 7.0 8.1 0.0 12.8 2.3 2.4
全業種平均 57.2 9.2 8.2 9.2 0.2 7.5 7.3 1.2

 

表2 新卒者の採用方法     (単位:%)
項目 学校からの紹介 職安からの斡旋 縁 故 求人広告 その他
鉱業・建設業 66.2 40.4 7.9 9.9 2.0
製造業 76.4 27.5 4.5 9.6 1.1
卸売業 66.6 26.6 3.3 16.6 6.7
小売業 72.0 34.0 12.0 22.0 6.0
運輸・サービス業 69.0 22.5 7.0 8.5 5.6
全業種平均 71.0 31.5 6.6 11.3 2.9

 

伸び率も全国的に低率

 表3は初任給見込額について学歴別にみたものである。金額では、増加が短大・高専・専門校卒男子の3千円台で最も高く、以下大卒男子、高卒女子の順となっている。一方、減少では大卒女子が△6千円台と大幅にマイナスに転じたほか、短大・高専・専門校卒女子の△2千円台と続いている。また、伸び率では全般的に低く、最高でも短大・高専・専門校卒男子の2.1%であり、特に女子では各学歴とも伸び悩んでいる。
 労働省の賃金構造基本統計調査(速報値)によると、平成8年春の全国の平均初任給は大卒男子193,200円、同女子183,600円、短大・高専卒女子158,700円、高卒男子154,500円、同女子146,100円となっている。いずれも県内企業の9年春の見込額をも大きく上回っている。

 
表3 学歴別初任給     (単位:%)
項 目 大 学

短大・高専・専門学校

高 校
男子 女子 男子 女子 男子 女子
9年4月(予測) 173,854 165,705 155,221 143,337 140,805 136,414
8年4月(実績) 171,956 172,104 152,034 146,024 141,654 135,299
増減 金額 1,889 △6,399 3,187 △2,687 △849 1,115
伸び率 1.1 △3.7 2.1 △1.8 △0.6 0.8

 

技術職の採用マインド高まる

 表4は男子の業種別の初任給見込額を表している。学歴別に平均をみると、大卒では、運輸・サービス業を除いては17万円台で、特に小売業が高くなっている。短大・高専・専門校では、鉱業・建設業、卸売業で平均を上回っている。高卒では小売業、鉱業・建設業が14万円台で平均を上回り、次いで卸売業、製造業、運輸・サービス業の順であり、いずれも13万円台で平均を下回っている。
 次いで職種別の平均をみると、大卒と高卒の技術職が他職種より高くなっている。これを学歴別にみると、大卒では卸売業を除いて技術職が高く、小売業、製造業が平均を上回っている。その他の業種は平均を下回っており、特に運輸・サービス業は16万円台となり前年調査を大きく下回っている。高卒では職種間の差は少ないが、鉱業・建設業、製造業、小売業が14万円台で平均を上回っている。
 表5は女子のそれを表している。学歴別に平均をみると、大卒では運輸・サービス業、卸売業が17万円台と高い。短大・高専・専門校卒では製造業、卸売業が15万円台で高く、他の業種は13万円台と平均を下回っている。高卒では、製造業、鉱業・建設業、小売業の順に高いが、運輸・サービス業は12万円台と平均を大きく下回っている。職種別に平均をみると、男子とは逆に技術職以外の職種が高い傾向にある。学歴別にみると、大卒の営業職が製造業、卸売業で17万円台と平均を大きく上回っている。短大・高専・専門校卒では前年同様に営業職で高い業種が多い。高卒では、小売業を除いて(卸売業回収サンプル0件)営業職が高い。また、各業種の平均と比べてみると、製造業では各業種とも上回っており、逆に運輸・サービス業では下回っている。
 このように、同じ学歴の場合でも業種別さらには職種別にそれぞれ格差が顕著となっている。また、採用人員では鉱業・建設業、製造業を中心に学歴・男女を問わず技術職に対するものが多くなっている。
 

表4 男子新卒者の業種別初任給(平均値)     (単位:人、円)
学歴 職種 鉱業・建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・サービス業 平均
人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額
大学 技術 34 175,859 60 177,372 6 170,267 5 181,600 7 169,214 112 176,211
事務 8 164,400 12 154,592 1 171,000 0 0 0 0 21 159,110
営業 57 175,413 15 173,450 4 171,000 2 160,000 0 0 78 174,414
平均 99 174,676 87 173,553 11 170,600 7 175,428 7 169,214 211 173,845
短大・高専・専門 技術 38 153,286 48 161,938 9 156,844 4 147,500 15 151,655 114 156,792
事務 11 144,500 12 122,942 0 0 0 0 0 0 23 133,252
営業 22 167,318 7 164,111 0 0 0 0 1 153,000 30 166,093
平均 71 156,272 67 155,180 9 156,844 4 147,500 16 151,738 167 155,221
高校 技術 220 147,241 208 145,425 46 138,422 52 146,052 52 135,535 578 144,726
事務 24 137,708 12 139,367 0 0 0 0 8 127,093 44 136,230
営業 57 138,055 54 138,000 0 0 8 139,875 5 135,880 124 124,043
平均 301 144,741 274 137,353 46 138,422 60 145,228 65 134,522 746 140,805

 

表5 女子新卒者の業種別初任給(平均値)    (単位:人、円)
学歴 職種 鉱業・建設業 製造業 卸売業 小売業 運輸・サービス業 平均
人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額
大学 技術 7 166,497 7 169,593 3 171,000 0 0 1 174,500 18 168,896
事務 10 169,700 5 164,840 2 171,000 0 0 0 0 17 168,424
営業 10 151,945 7 172,571 3 171,000 0 0 0 0 20 162,023
平均 27 162,293 19 169,439 8 171,000 0 0 1 174,500 55 165,705
短大・高専・専門 技術 15 138,949 9 149,232 0 0 2 132,100 3 132,533 29 141,004
事務 21 130,837 7 154,500 1 152,000 0 0 1 147,000 30 137,603
営業 3 152,833 15 157,039 0 0 0 0 1 149,000 19 155,952
平均 39 135,649 31 154,199 1 152,000 2 132,100 5 138,720 78 143,337
高校 技術 115 136,426 105 139,144 11 134,825 13 136,189 59 120,529 303 134,205
事務 44 133,050 15 137,287 2 136,000 3 141,666 12 129,028 76 133,669
営業 99 142,589 79 140,769 0 0 5 129,000 23 134,652 206 140,675
平均 258 138,216 199 139,649 13 135,005 21 135,260 94 125,069 585 136,414

 

「100〜299人」で初任給平均を下回る

 表6は初任給見込額を従業員規模別にみたものである。  最高額の分布の状況をみると、男子では各学歴とも規模が小さい「10〜19人」、「20〜29人」のものに集中している。一方、女子では「30〜49人」の大卒、短大・高専・専門校卒、「300人以上」の高卒とがばらつきがみられる。「100〜299人」の規模では各学歴・男女のすべてが平均を下回っているほか、学歴別にみると「300人以上」の高卒女子のみが平均を上回っている。また、従業員規模間での最大の格差は、大卒男子では 27,685円、同女子が18,333円、短大・高専・専門校卒男子では19,295円、同女子が35,500円、高卒男子では17,493円、同女子が10,239円となっている。短大・高専・専門校卒女子で3万円以上の格差が目立ったほか、それ以外の学歴でも万単位の開きがあり規模別にみた場合大きな格差がみられる。
 

表6 従業員規模別初任給     (単位:人、円)
学歴 性別 10人未満 10〜19人 20〜29人 30〜49人 50〜99人 100〜299人 300人以上
人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額 人員 金額
大学 0 0 5 187,240 10 195,100 25 175,664 49 177,498 64 167,415 54 170,675
0 0 1 155,000 1 170,000 3 173.333 12 161,567 13 164,488 23 168,151
短大・高専・専門 6 165,500 18 159,444 8 168,375 33 160,479 24 154,945 55 150,337 23 149,080
16 148,725 42 149,345 59 143,897 109 146,961 168 144,738 273 132,963 71 131,852
高校 16 148,725 42 149,345 59 143,897 109 146,961 168 144,738 273 132,963 71 131,852
13 131,231 26 133,357 26 136,062 54 134,844 118 134,947 218 135,804 123 141,470

 

地域別にも初任給に格差

  表7は広域生活圏別に初任給見込額をみたものである。これをみると盛岡地域では各学歴男女とも平均を上回っており、岩手中部、胆江、両磐でも概ねそれぞれ平均を上回っている。その他の地域では、釜石、二戸地域で大卒男子が18万円台、気仙、宮古地域で大卒女子が17万円台と平均を上回ったほか、気仙、二戸地域で短大・高専・専門校が15万円台、釜石、宮古地域で高卒男子が14万円台と平均を上回っている。このように商工業が集積している盛岡、岩手中部、胆江地域では大半が平均を上回っているが、それ以外の地域ではほとんどが平均を下回っており、特に久慈地域では平均を上回ったものがなく、地域別にも初任給における格差がみられる。
 

表7 広域生活圏別初任給(単位:人、円)
地域 性別 大 学 短大・高専・専門 高 校
人員 金額 人員 金額 人員 金額
盛岡 94 175,170 60 158,373 250 144,083
26 167,382 34 147,151 209 138,539
岩手中部 44 172,074 36 157,624 151 147,406
10 166,135 17 148,634 138 140,615
胆江 30 179,180 30 157,333 102 144,663
7 171,429 14 159,264 52 134,444
両磐 14 176,207 9 161,356 71 139,796
2 179,000 3 147,230 69 140,961
気仙 12 166,267 6 155,833 27 140,500
8 171,000 3 138,733 10 130,300
釜石 5 181,600 4 147,500 45 143,349
0 0 0 0 14 139,176
宮古 3 161,500 4 142,955 30 141,193
1 174,500 3 139,867 34 131,478
久慈 1 160,000 6 150,500 21 132,892
0 0 0 0 26 121,088
二戸 3 180,000 6 158,833 21 136,210
0 0 2 137,000 34 124,882

 

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