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特集●平成8年求人動向調査結果
 


久々に好転の兆し感じられる雇用情勢


 
 岩手県産業情報センターは、8月30日現在て県内中小企業を対象に求人動向調査を実施した。回収サンプル数は558企業である。
 これによると、今春の新卒者に対する求人企業比率は久々に前年を上回った。また、来春の新卒者を「採用計画あり」と回答した企業が前年を上回るなど、県内の雇用情勢に明るさが感じられる。

 この調査は当産業情報センターが毎月実施している経営動向調査の対象企業62業種1,650企業に対し8月に調査を実施し分析したもので、回収サンプル数は、鉱業21、建設業72、製造業210、卸売業46、小売業138、運輸業26、サーピス業45、合計558社となっている。

 

求人企業比率・就職企業比率とも増加

 表1は業種別の求人状況を示している。これによると、今年の新卒者に対して求人のあった企業比率は38.0%(前年調査30.5%)と前年比7.5ポイント上回り、求人数も1,044人(558社中)で1企業当たり1.9人と前年調査の1.2人(445社中540人)を0.7人上回った。これを業種別にみると、1企業当たりの求人数は、鉱業0.2人(前年調査0.4人)、建設業1.9人(同1.6人)、製造業1.6人(同0.9人)、卸売業0.9人(同0.6人)、小売業2.9人(同1.3人)、運輸業0.5人(同0人)、サービス業2.3人(同2.9人)となっており、小売業での伸びが目立っている。
 これに対して、新卒者の就職者数は948人で、1企業当たりの就職者数も4.5人(前年調査1.2人)と前年調査を3.3人上回った。全体の充足率(就職者数÷求人数)は90.8%と求人数が大幅に増加したため、前年調査97.6%を6.8ポイント下回った。業種別にみると、卸売業、サービス業で求人数を上回る高い充足率を示したほか、運輸業が久々に高い伸び率を示した。続いて製造業が90%台、建設業が80%台、小売業が70%台となっている。
 一方、今年4月から6月までに離職者(定年や解雇、死亡等によらない任意の離職者)のあった企業比率は39.4%(前年調査26.9%)と12.5ポイント上回ったほか、1企業当たりの離職者数も1.9人と前年調査を1.0人上回った。
 また、この3カ月間の中途採用の企業比率は常用が38.2%(前年調査30.5%)臨時6.8%(同5.4%)と大幅に増加し、1企業当たりの採用者数は常用が2.8人(同0.6人)、臨時4.6人(同0.2人)と両者合計で6.6人前年調査を上回った。このように、景気が回復の兆しにあるといわれる中で、殆どの業種で求人数、就職者数とも前年調査を上回っている。
 業種別に特徴を見ると、鉱業は離職者が少なく、中途採用者が多い。建設業も鉱業と同様に離職者が少なく、例年中途採用者が多い。製造業では一般機械、電気機械、輸送機械、精密機械で求人企業比率が50%以上の高率となっている。また、食品は就職者数、中途採用者ともに高く、増減で大幅に増加した。繊維、印刷、鋳物、金属では離職者のあった企業比率が高くなっているが、中途採用者の確保により増減でプラスになっている。卸売業、運輸業、サービス業では求人に対する充足率が高いのが目立っている。小売業は就職者、中途採用者とも積極的な採用により、増減で大幅な増加を示した。

 

表1 業種別求人状況
区分 1企業当たり従業員数 新規学卒者 同就職者 8/4〜8/6の離職者 8/4〜8/6の中途採用者 増減 1企業当たり増減
求人企業比率 求人数 就職者のあった企業比率 就職者数 離職者のあった企業比率 離職者数 常用 臨時
企業比率 採用者数 企業比率 採用者数
鉱業 27.7 14.3 4 14.3 4 19.0 3 28.6 11 0.0 0 12 0.6
建設 40.2 54.2 135 54.2 113 36.1 30 40.3 50 69.4 6 139 1.9
製造 52.7 38.6 340 38.6 309 41.1 169 37.6 262 8.1 45 447 2.1
食品 48.1 34.6 86 32.7 81 34.6 26 32.7 65 15.4 20 140 2.7
繊維 65.4 30.8 29 30.8 29 46.1 19 61.5 18 7.7 1 29 2.2
木材 35.7 30.0 20 30.0 18 30.3 16 36.6 27 3.3 2 31 1.0
建具 21.7 33.3 2 33.3 2 33.3 1 16.6 1 0.0 0 2 0.3
印刷 61.4 44.4 12 44.4 12 55.5 15 44.4 20 0.0 0 17 1.9
窯業 32.4 21.4 19 21.4 14 28.6 6 21.4 15 7.1 4 27 1.0
鋳物 45.4 25.0 13 25.0 7 50.0 4 37.5 4 0.0 0 7 0.9
金属 43.5 27.3 9 27.3 8 54.5 8 54.5 8 9.1 2 10 0.9
一般機械 76.1 58.3 34 58.3 29 41.6 15 33.3 11 0.0 0 25 2.1
電気機械 73.5 63.6 71 63.5 70 40.9 13 45.5 57 4.5 4 118 5.4
輸送機械 66.6 66.6 22 66.6 21 55.5 8 55.5 15 0.0 0 28 3.1
精密機械 108.0 60.0 23 60.0 18 100.0 38 40.0 21 30.0 12 13 1.3
卸売 31.8 39.1 44 39.1 67 39.1 25 34.8 36 4.3 2 80 1.7
小売 44.8 34.8 407 34.8 316 35.5 124 35.5 143 7.2 118 453 3.3
運輸 56.2 19.2 12 19.2 12 65.4 33 69.2 54 0.0 0 33 1.3
サービス 29.2 40.0 102 40.0 127 42.2 39 35.5 47 8.9 5 140 3.1
合計 44.8 38.0 1044 37.8 948 39.4 423 38.2 603 6.8 176 1304 2.3

*増減=新規学卒者+中途採用者−離職者

 

離職者僅かに前年を下回る

 表2は7年4月から8年6月までの15カ月間の離職者の状況を示している。全体では、39.4%の企業で離職者があり、前年調査の39.6%を0.2ポイント下回った。業種別にみると、運輸業で前年調査を21.6ポイント上回ったのをはじめ、卸売業、サービス業も僅かながら前年を上回った。鉱業、建設業、製造業、小売業では、僅かに前年を下回った。離職者理由の内訳で最も多かったのが「結婚・出産等本人の家庭の事情」で55.5%(前年調査52.0%、次いで「仕事が本人の性格にあわない」の45.0%(同44.5%)でいずれも前年と同順位になった。以下、「職場の人間関係がうまくいかない」が25.9%(同17.7%)、「その他」が16.8%(同17.1%)の順となっている。
 これを業種別にみると、鉱業では、「仕事が本人……」、「職場の人間関係が……」が50.0%と非常に高い比率を示した。建設業では、「結婚・出産………」が40%台で最も高い。製造業では、例年同様に全業種と同じ傾向にある。卸売業では、「結婚・出産……」が高いが、前年調査で23.0%あった「独立開業」が皆無である。小売業では、「結婚・出産………」が最も高く、その比率は他業種に比ベ、抜きんでている。運輸業では、「職場の人間関係………」が他業種に比べて最も高い。サービス業では、「結婚・出産…」、「職場の人間関係……」の順に高くなっている。

 

表2 県内企業の離職状況 (単位:%)
区分 鉱業 建設 製造 卸売 小売 運輸 サービス 総平均
離職のあった企業割合(7/4〜8/6) 19.0 34.7 41.0 39.1 36.9 65.3 42.2 39.4
経営者からみた離職理由
 給料が安い 0.0 4.0 10.5 16.7 13.6 35.3 10.5 11.8
 労働条件が厳しい 0.0 0.0 7.0 0.0 16.3 17.6 26.3 9.1
 仕事が本人の性格にあわない 50.0 36.0 52.3 33.3 54.2 58.8 36.8 45.0
 職場の人間関係がうまくいかない 50.0 32.0 20.9 5.6 21.7 70.6 42.1 25.9
 結婚・出産等本人の家庭の事情 25.0 44.0 58.1 55.6 86.7 47.1 52.6 55.5
 独立開業 0.0 8.0 3.5 0.0 13.6 0.0 0.0 4.5
 その他 25.0 12.0 19.8 33.3 16.3 17.6 5.3 16.8
 回答なし 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0

*重複回答があるため合計は100%を越える

 

 次に、図1は、業種別、年代別、性別の離職者の比率である。全業種では、例年のとおり、20代の男子で17.8%、20代の女子で19.2%と高い比率で突出している。他の年代では、新卒者、10代で10%を切る比率、30代では20%台、40代、50代で10%台の離職者比率となっており、20代からは年代が高まるにしたがって、漸減傾向を示している。また年代別に離職者をみると、20代を除いて男子の離職者が女子を上回っており、例年の傾向とは異なっている。
 業種別にみると、鉱業では、30代、40代の男子において離職者比率が高く、建設業では、各年代で男子が高く、同業種全体の80%を超えた。製造業では、20代男女で50%を超え、卸売業、小売業でも、20代男女で40%を超える高い比率を示した。また、運輸業では20代から50代の男子で80%以上を占め、サービス業では、男女とも20代で高い比率を示した。
 

図1

 

明るさが感じられる採用計画

 表3は、来春の新卒者の求人状況を示している。全業種では、「採用せず」の企業が35.8%と前年調査35.3%を0.5ポイント上回ったが、「採用計画あり」と回答した企業も34.8%と前年調査の31.4%を3.4ポイント上回った。また、「採用せず」の理由として、「現在の従業員で十分」と回答した企業が33.0%で前年調査を4.5ポイント上回った。「採用計画あり」と回答した企業の内、求人を「全部あるいは一部申し込んだ」と回答した企業は、27.2%で、7割以上の企業が既に求人の申込みを済ませている。
 

表3 来春学卒者求人申込状況 [( )内は前年調査 単位:%]
区分 鉱業 建設 製造 卸売 小売 運輸 サービス
採用せず
 現在の従業員で十分 42.9 153 33.8 17.4 44.2 23.1 40.0 33.0
(10.5) (5.0) (27.1) (24.3) (46.4) (37.5) (37.5) (28.5)
 採用条件があわない 0.0 1.4 1.9 0.0 0.0 0.0 2.2 1.1
(0.0) (1.7) (1.1) (0.0) (1.0) (0.0) (0.0) (0.9)
 その他/理由なし 0.0 0.0 1.0 6.5 2.2 7.7 0.0 1.7
(21.1) (8.3) (6.1) (0.0) (4.1) (6.3) (3.1) (5.9)
 小 計 42.8 16.7 36.7 23.9 46.4 30.8 42.2 35.8
(31.6) (15.0) (34.3) (24.3) (51.5) (43.8) (40.8) (40.6)
採用するかどうか決めていない 42.9 27.8 26.7 43.5 24.6 57.7 22.2 29.4
(57.9) (21.7) (37.6) (48.7) (20.6) (43.8) (31.3) (33.3)
採用計画あり
 まだ申し込んでいない 0.0 11.1 4.2 10.9 5.1 7.7 11.1 6.5
(5.3) (3.3) (4.9) (10.8) (6.2) (0.0) (9.4) (5.7)
 一部申し込んでいる 4.8 5.6 4.7 2.2 2.9 0.0 6.7 4.1
(0.0) (11.7) (3.9) (5.4) (4.1) (0.0) (0.0) (4.5)
 全部申し込んだ 9.5 38.9 26.7 15.2 19.6 3.8 17.8 23.1
(5.3) (43.3) (18.2) (10.8) (17.5) (12.5) (18.7) (20.1)
 その他 0.0 0.0 10.0 4.3 1.4 0.0 0.0 1.1
(0.0) (5.0) (1.1) (0.0) (0.0) (0.0) (0.0) (1.1)
 小 計 14.3 55.6 36.6 32.6 29.0 11.5 35.6 34.8
(10.6) (63.3) (28.1) (27.0) (27.8) (12.5) (28.1) (31.4)


 以上のことから、景気の回復基調が続く中、前年調査時より積極的な採用意欲が感じられ幾分明るさがみられる。
 新卒者の求人状況を業種別にみると、鉱業では、「採用せず」が42.8%と前年調査を11.2ポイント上回っているほか、「採用するかどうかまだ決めていない」も42.9%と高い。建設業では、「採用計画あり」が55.6%で、例年のとおり旺盛な採用意欲が感じられる。製造業では、「採用せず」、「採用計画あり」いずれも前年調査を上回っている。卸売業では、「採用計画あり」が5.6ポイント上回ったほか、小売業では、「採用せず」が5.1ポイント下回った。また、運輸業では、「採用せず」が前回調査を13.0ポイントも下回ったこと、サービス業では、「採用計画あり」が7.5ポイント上回ったことも目についた。

 

伸び率微増の初任給

 最後に、図2は、来春採用を計画じている企業において、新規学卒者の予想基本給を今年度の実績と対比して表している。高卒の男子では、138,463円で今年度比1.4%(前年調査7.6%)の増加、女子は132,093円で0.1%(同4.3%)の減少が見込まれている。大卒の男子では、166,273円で2.2%(同0.6%)の増加、女子は158,352円で3.1%(同△3.3%)の増加が見込まれている。また、短大卒、高専卒、専門学校などのその他では、男子が161,357円で9.0%(同1.1%)の増加、女子は138,917円で2.0%(同7.3%)の増加が見込まれている。


図2


 以上のとおり、高卒の女子で唯一前年を下回ったが、それ以外ではすべて前年を上回った。全体として伸び率が小さい中にあってその他男子で9.0%と大きな伸びを示したのが目につく。

 


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