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特集●平成8年度上期県内法人企業設備投資計画調査結果

県内企業の設備投資計画
投資額 前年比プラスに


 この調査は、当産業情報センターが岩手県商工労働部の委託を受けて半年ごとに実施しているもので、今回は平成8年度上期分(8年4月〜8年9月)にあたり、調査時点は7月8日現在である。
 調査対象企業は、建設業、製造業では従業員80人以上、卸売業、小売業、運輸業、サービス業は40人以上の主要法人企業500社。回収調査票から記入不備分を除いた回答企業数は230社で、有効回収率は46.0%だった。この業種別内訳は、建設業33社、製造業91社、卸売業25社、小売業24社、その他(運輸・サービス業)57社となっている。

 

投資額 前年比33.5%増

 表1は、回答のあった230企業の業種別設備投資動向(支払ベース)を示している。これによると平成8年度上期における設備投資計画の総額は160億3,394万円で、これを前年同期実績に比べてみると、緩やかな回復基調の県内景況を反映し33.5%の大幅増の見直しとなったが、一方、対前期比では△1.3%の微減となった。
 業種別にみると、建設業では、前年同期比△48.1%と大幅な減少見通しとなっている。これは、公共工事契約発注が高水準で推移している反面、民間需要が低迷しているため、売上減による収益の悪化を余儀なくされ、設備投資マインドの後退した企業が増加したためと思われる。
 製造業全体では、前年同期比51.5%増と明るい兆しが見え始めている。個別業種ごとにみると、前期まで低調に推移していた金属、機械が久しぶりに前年比プラスに転じたほか、木材・木製品・科学、鉄鋼、電気、精密の業種で前年比プラスとなっている。機械・金属では、誘致企業を中心とした生産性向上のための大規模な設備導入計画が増加要因となっている。木材・木製品は、低金利等を背景とした住宅投資の堅調な推移に支えられ、生産性向上等を目的とする投資増により前年比517.8%の大幅増となった。鉄鋼は、業者によりばらつきがあるものの、誘致企業の設備新設により、前年比627.2%の大幅増となった。電気、精密は、パソコン、携帯電話等の受注好調により高操業を継続しており、積極的な投資姿勢により好調に推移している。一方前年比マイナスになったのは、食料品、パルプ・紙・紙加工、窯業・土石、出版・印刷である。このうち出版・印刷は、前年度、新工場の建設、生産能力増大のための機械・装置への大規模投資があったための反動減によるものである。
 卸売業では、販売促進のため営業所等の新設やや駐車場整備を計画している企業もあり、全体としては前期同期比30.2%増加見通しとなっている。
  小売業
では、個人消費の堅調な推移により、店舗、営業所の新築、営業用土地取得等、積極的投資が散見され、久々に前年を上回り、前年同期比60.1%の増加見通しとなっている。
 その他(運輸・サービス業)
では、前年同期比32.0%の増加見通しとなっている。運輸業では、過積載対応のための車両購入が今期も多く、また船舶の購入を計画している企業もあり増加要因となった。サービス業では、小売業同様、店舗等建物増改築を中心とした投資傾向が窺われるが、コンピュータ導入・更新等、情報化への投資も散見された。
 

表1 業種別設備投資動向
区分 企業数 6年度下期 7年度上期 7年度下期 8年度上期
投資額 投資額 前年比 投資額 前期比 前年比 投資額 前期比 前年比
全業種 230 17,064,444 12,007,041 -29.6 16,244,024 35.3 -4.8 16,033,942 -1.3 33.5
建設業 33 970,251 1,901,828 96.0 2,017,605 6.1 107.9 986,795 -51.1 -47.1
製造業 91 12,398,882 7,950,216 -35.6 11,382,116 43.2 -8.2 12,043,716 5.8 51.5

食料品

13 2,518,858 813,437 -67.7 2,552,587 213.8 1.3 638,789 -75.0 -21.5

繊維

2 8,626 2,935 -66.0 0 -100.0 -100.0 0 0.0 -100.0

木材・木製品

6 38,348 115,747 201.8 305,313 163.8 696.2 715,074 134.2 517.8
パルプ・紙・紙加工 3 199,097 252,988 77.3 286,867 -18.7 44.1 271,005 -5.5 -23.2

化学

4 405,738 283,306 -30.2 705,599 149.1 73.9 574,781 -18.5 102.9

窯業・土石

6 277,765 578,417 97.4 431,141 -21.4 55.2 451,512 4.7 -17.7
鉄鋼 6 22,616 27,995 23.8 29,332 4.8 29.7 203,593 594.1 627.2
出版・印刷 7 1,731,707 749,938 -56.7 1,237,363 65.0 -28.5 441,879 -64.3 -41.1
金属 6 256,856 46,880 -81.7 126,330 169.5 -50.8 79,000 -37.5 68.5
機械 15 5,204,855 2,967,714 -43.0 2,657,784 -10.4 -48.9 5,486,466 106.4 84.9
電気 15 1,592,854 1,974,428 24.0 2,905,016 47.1 82.4 2,981,979 2.6 51.0
精密 8 141,562 66,431 -53.1 144,784 117.9 2.3 199,638 37.9 200.5
卸売・小売・他 106 3,695,311 2,154,997 -41.7 2,844,303 32.0 -23.0 3,003,431 5.6 39.4
卸売 25 212,220 234,835 10.7 280,979 19.6 32.4 305,832 8.8 30.2
小売 24 1,430,408 577,754 -59.6 1,307,050 126.2 -8.6 925,021 -29.2 60.1
その他 57 2,052,683 1,342,408 -34.6 1,256,274 -6.4 -38.8 1,772,578 41.1 32.0

 

「機械・装置」が7割越える

 図1は、設備投資の内容についてみたものである。
 全業種では、「機械・装置」が72.1%(前年同期調査61.8%)、「建物」が17.0%(同25.5%)、「土地」が7.8%(同8.7%)、「構築物」が3.1%(同4.0%)、の順となっている。ここ数年、設備投資に占める「機械・装置」の割合は増加傾向にあり、逆に「土地」、「建物」の割合は減少する傾向にあったが、今期もこの傾向が顕著に現れた。
 業種別にみると、建設業では、前年4割強をを占めた「土地」が1.7%と大幅に減少し、その分「機械・装置」へシフトした形となり9割を越えた。 製造業でも、「機械・装置」の占める割合は約8割に増加し、不動産への投資割合は減少傾向にある。 卸売業では、前年同期トップであった「建物」が半減し「機械・装置」、「構造物」の割合が増加している。 小売業・その他も卸売業とほぼ同様の割合となっているが、「機械・装置」の割合が減少している点が特徴的である。
 

図1

 

「内部保留」大幅増加

 次に、資金計画(設備投資資金の調達計画)についてみたのが図2である。全業種では、「借入金」が48.2%(前年同期調査56.6%)、「その他」29.2%(同9.8%)、「内部留保」21.3%(同33.5%)順となっており、「借入金」、「内部保留」が減少し、「その他」の割合が増加している。
 業種別にその内訳をみると、建設業では、「借入金」の割合が前年度の67.7%から58.4%と減少しその分内部保留の割合が微増した。 製造業では、「その他」の割合が大きくなっているが、これは、投資額の大きい誘致企業において設備投資資金を本社調達によって賄う先が多かったためである。 卸売業・小売業・その他では、ほぼ前年通りの資金計画となっている。
 

図2

 

例年通りの投資目的

企業における設備投資の目的をみたのが図3(建設業、製造業)と図4(非製造業)である。
 建設業、製造業についてみると、「生産性向上」18.9%、「整備補修」16.4%、「生産力増大」14.9%と上位3項目は例年どおり変化がない。また「設備投資せず」は17.9%と前年同期の16.4%を若干上回った。
 非製造業でも、昨年同様「売上高増大」21.3%、「店舗等補修」13.1%と、この2項目が上位を占めているが、「その他」が増加しており投資目的の多様化がみられる。「設備投資せず」は36.1%と、前年同期の40.3%を下回った。
 

図2
 

図2

 

売上げ、増加の見通し

 最後に、回答企業における総売上高の実績と平成7年度上期の予想についてみたのが表2である。
 全業種では、平成5年度上期5.2%、平成6年度上期△1.6%、平成7年度上期△0.8%、平成7年度下期9.0%(いずれも調査時点予想)と推移し、今回の調査では前年同期比12.4%増と二桁台の増加予想となっている。
 これを業種別にみると、建設業では、設備投資の動向と同様に、前期比△10.2%の減少予想となっている。 製造業全体では、8.1%の増加予想であるが、個別の業種では、金属、電気、機械の好調さが目を引く。非製造業では、いずれの業種とも対前年プラスとなっており、県内景況の動向を反映したものとなっている。

表2 総売上高の実績と見通し
区分 企業数 6年度下期 7年度上期 7年度下期 8年度上期
売上高 売上高 前年比 売上高 前期比 前年比 売上高 前期比 前年比
全業種 230 641,310,871 532,980,421 -16.9 558,403,862 4.8 -12.9 599,195,881 7.3 12.4
建設業 33 69,077,765 62,832,526 -9.0 59,310,110 -5.6 -14.1 56,447,280 -4.8 -10.2
製造業 91 292,402,490 296,458,666 1.4 299,995,130 1.2 2.6 320,334,588 6.8 8.1
食料品 13 63,523,187 61,318,630 -3.5 56,788,997 -7.4 -10.6 55,528,734 -2.2 -9.4
繊維 2 973,588 720,573 -26.0 686,230 -4.8 -29.5 600,000 -12.6 -16.7
木材・木製品 6 11,395,482 10,517,683 -7.7 10,526,411 0.1 -7.6 11,220,310 6.6 6.7
パルプ・紙・紙加工 3 9,052,409 10,349,089 14.3 10,027,134 -3.1 10.8 8,688,560 -13.3 -16.0
化学 4 6,734,310 5,854,105 -13.1 6,558,783 12.0 -2.6 6,236,050 -4.9 6.5
窯業・土石 6 14,134,954 13,663,565 -3.3 16,095,786 17.8 13.9 13,976,827 -13.2 2.3
鉄鋼 6 3,739,388 2,919,374 -21.9 2,792,257 -4.4 -25.3 3,037,557 8.8 4.0
出版・印刷 7 10,916,696 11,305,601 3.6 11,518,334 1.9 5.5 11,853,637 2.9 4.8
金属 6 6,017,288 5,114,067 -15.0 6,868,478 34.3 14.1 6,287,000 -8.5 22.9
機械 15 104,100,508 109,400,454 5.1 97,220,517 -11.1 -6.6 121,227,017 24.7 10.8
電気 15 50,340,785 55,430,851 10.1 71,621,655 29.2 42.3 72,067,627 0.6 30.0
精密 8 11,473,895 9,864,674 -14.0 9,290,548 -5.8 -19.0 9,611,269 3.5 -2.6
卸売・小売・他 106 279,830,616 173,689,229 -37.9 199,098,622 14.6 -28.9 222,414,013 11.7 28.1
卸売 25 154,383,606 61,689,697 -60.0 69,528,700 12.7 -55.0 100,728,644 44.9 63.3
小売 24 81,096,561 74,865,768 -7.7 85,124,468 13.7 5.0 83,686,476 -1.7 11.8
その他 24 81,096,561 74,865,768 -7.7 85,124,468 13.7 5.0 83,686,476 -1.7 11.8


 
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