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特集●平成7年度金融借入実態調査結果
 

景気停滞下の県内金融借入事情


 
 この調査は、当センターが毎年実施しているもので、調査対象企業は毎月実施している県内経営動向調査先の1,563企業である。調査時点は平成7年1月31日現在で、回収サンプル数は、 777企業(有効回収率49.7%)であった。回答企業の業種別内訳は、製造業296、商業267、サービス業84、建設業116、鉱業14となっている。
 

借入先トップは今年も銀行

 表1は、過去3年間の事業資金の借入の有無および借入先についてみたものである。借入したことが「ある」と答えた企業は全体で81.5%と、前回調査の79.3%を2.2ポイント上回った。
 これを業種別にみると、製造業が4.9ポイント(前回調査78.3%)、サービス業が7.2ポイント(同70.2%)、建設業が0.2ポイント(同86.4%)、鉱業が3.6ポイント(同75.0%)それぞれ前回調査を上回ったが、唯一商業が前回調査の80.7%を1.7ポイント下回ったのが目を引く。
 次に事業資金の借入機関についてみると、全体では例年と同様「銀行」(地元・地元以外合算)が最も多く、その割合は年々高まってきている。以下、「政府系金融機関」、「信用金庫・信用組合」、「県の制度融資」、「市町村の制度融資」、「その他」の順となっている。県の制度融資、市町村の制度融資、銀行、信用金庫・信用組合が前回調査を上回ったのに対し、政府系金融機関は4.1ポイント前回調査を下回った。業種別に借入先の特徴をみると、製造業では信用金庫・信用組合が1.1ポイント前回調査を上回ったはかは、すべての機関でポイントを下げている。商業では信用金庫・信用組合が5.5ポイント、県の制度融資が2.5ポイント前回調査を上回り、政府系金融機関は僅かであるが前回調査を下回っている。サービス業では銀行が2.7ポイント、県及び市町村の制度融資が3.2ポイント(合算)それぞれ前回調査を上回り、信用金庫・信用組合が1.1ポイント、政府系金融機関が0.7ポイントそれぞれ前回調査を下回った。建設業では政府系金融機関が18.0ポイントも下回ったほか、前回調査で上回った銀行が2.8ポイント下回り、逆に県及び市町村の制度融資、信用金庫・信用組合が前回調査を上回った。鉱業では銀行が29.8ポイント、市町村の制度融資が16.2ポイント前回調査を大きく上回ったのが目立ち、信用金庫・信用組合、政府系金融機関はそれぞれ前回調査を下回った。図表化していないが、従業員規模別に借入先の特徴をみると、従業員数が多くなるにつれて、政府系金融機関と市町村の制度融資から銀行、県の制度融資の割合が高くなっているのが目につく。
 

表1 事業資金の借入先(単位:件、%)
借入機関・業種 製造業 商業 サービス業 建設業 鉱業 合計
件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率
政府系金融機関(国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等) 151 59.9 123 57.5 37 56.9 35 34.0 7 63.6 353 54.7(58.8)
件の制度融資 60 23.8 17 7.9 2 3.1 20 19.4 2 18.2 101 15.7(3.1)
市町村の制度融資 19 7.5 25 11.7 6 9.2 8 7.8 3 27.3 61 9.5(8.1)
地元銀行 174 69.0 157 73.4 47 72.3 83 80.6 10 90.9 471 73.0
地元以外の銀行 22 8.7 18 8.4 6 9.2 6 5.8     52 8.1
信用金庫・信用組合 67 26.6 58 27.1 17 26.2 39 37.9 2 18.2 183 28.4(24.7)
その他 11 4.4 4 1.9 3 4.6 1 1.0 1 9.1 20 3.1(4.3)
借入ありと回答した企業数合計 252 83.2 214 79.0 65 77.4 103 86.6 11 78.6 645 81.5(79.3)

(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )は前年度比率。

 

「経営業績悪化」が理由の1位に

 図1は、過去3年間に借入しなかった理由を調査した結果である。「必要なし」が75.8%ヒ前回調査を1.1ポイント上回っている。事業資金を借入しなかった企業のうち、「必要だったが借りなかった」企業が20.0%ある。その内訳をみると「経営業績悪化」が42.5%(前回調査46.6%)と最も多く、前回調査5位の「金利が高い」が21.5%(同6.8%)と割合を高めている。前同調査を4.9ポイント上げて「手続きが面倒」、前回調査2位の「担保物件無し」は12.0%(同19.9%)と大幅に減少し、以下「断られた」「保証人無し」がそれぞれ3.0%となっている。
 

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昨年と同じ借入予定先

 表2は、借入する予定の機関をみたものである。全体では58.2%の企業が借入を予定しており、前回調査を僅かに下回る結果となった。借入機関別では銀行(地元、地元以外合算)が73.2(前回調査70.9%)と2.3ポイント増加してトップ、信用金痺・信用組合も21.1%(同18.7%)と県の度融資13.5%(同16.4%)を上回り、市中金融機関の占める割合が高くなった。その他についは、政府系金融機関44.6%(同52.8%)、市町村の制度融資5.7%(同7.3%)となっている。業種に特徴をみると、製造業では全体に比べ、県の制度融資の割合が高い。商業では政府系金融機関が全業種でトップとなっている。サービス業では、例年と同様に銀行が7割台と高く、建設業では信用金庫・信用組合の割合が全業種で最も高くなっている。鉱業では回答企業数は少ないが政府系金融機関と銀行に分かれ、特に、銀行は前回調査の倍近くの割合となり、大きく上回っている。
 

表2 事業資金の借入予定先(単位:件、%)
借入機関・業種 全業種 建設業 製造業 卸・小売業(飲食業含む) サービス業 運輸業・その他
件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率 件数 比率
政府系金融機関(国民金融公庫、中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等) 88 49.2 77 50.3 21 46.7 16 20.8 3 50.0 205 44.6(52.8)
件の制度融資 36 20.1 15 9.8 3 6.7 8 10.4     62 13.5(16.4)
市町村の制度融資 5 2.8 11 7.2 7 15.6 4 5.2     27 5.9(7.3)
地元銀行 121 67.6 101 66.0 31 68.9 55 71.4 5 83.3 313 68.0
地元以外の銀行 7 3.9 11 7.2 3 6.7 3 3.9     24 5.2
信用金庫・信用組合 38 21.2 27 17.6 10 22.2 22 28.6     97 21.1(18.7)
その他 7 3.9 1 0.7 3 6.7 1 1.3     12 2.6(2.5)
借入ありと回答した企業数合計 179 59.1 153 56.5 45 53.6 77 64.7 6 42.9 460 58.2(60.2)

(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )は前年度比率。

 

「3,000万円以上」前回調査を下回る

 図2は、借入する際の予定額についてみたものである。全体では「3,000万円以上」の占める割合が41.0%と前回調査を僅かであるが下回った。業種別にみると、「3,000万円以上」で前回調査を下回っているのが、製造業、商業、サービス業で、逆に前回調査を上回ったのは建設業、鉱業となっている。特に、鉱業では前回調査の18.7%を31.3ポイント上回っている。なお、この表にはないが、20人超の従業員規模の企業では1,000万円以上の借入を予定している先が9割近くになっている。


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高い信用保証制度への評価

 企業が借入する場合、信用面を補完する制度として岩手県信用保証協会の保証制度がある(平成8年1月末現在の保証債務残高1,668億円、前年同月比107.6%)。今回もこれまでと同様、保証制度について調査を実施した。図表化していないが、信用保証制度を「知っている」と答えた企業は全業種で93.3%と9割を超え、また業種別でも概ね9割を超えている。次に保証制度の利用状況についてみると、全体では回答企業の51.1%が「利用したことがある」
としており、業種別ではサービス業が6割を超え高くなっており、建設業は4割台の低い利用状況となっている。
 表3は信用保証制度を利用した企業が、この制度をどのように評価しているかをみたものである。項目1から5までを「良い評価」、項目6から10までを「厳しい評価」とした場合、例年同様「良い評価」が「厳しい評価」の割合を圧倒しており、保証制度への高い評価が窺える。
 

表3 信用保証協会に対する評価 (単位:件、%)
理   由 合計
1.信用保証制度はよい制度だと思う。 117 31.4
2.信用保証協会の機能が銀行と一致している 193 51.7
3.保証料が安い 9 2.4
4.銀行の窓口を広くしてくれている 32 8.6
5.手続きが簡単 17 4.6
6.保証協会から担保の提供を求められた 57 15.3
7.貸付決定までの時間がかかりすぎる 26 7.0
8.審査が厳しい 40 10.7
9.手続きが難しい 7 1.9
10.保証料が高い 111 29.8
11.その他 12 3.2

回答企業数合計

373 /

(注)重複回答のため合計は100%を超える。


 

経営指導企業、5社に1社の割合

 
 
 表4は、金融借入実態調査に関連するという理由から、本調査と併せて実施した商工会議所、商工会の経営指導員の利用状況についてみたもので、企業がどのような内容の指導を受けたかを表したものである。
 指導を受けたことのある企業は回答企業中21.2%と約5社に1社の割合となっている。指導内容別にみると、「金融」がここ数年最も多く、かつ、その割合も高まってきている。以下「経理」39.0%、「経営」36.6%、「税務」21.3%、「労務」18.9%となっている。この表にはないが経営指導内容を従業員規模別にみると、従業員数が多くなるにつれて「金融」「経理」から「金融」「経営」へと変化してくる傾向にあり、特に、20人を超える企業では「経営」が5割近くにまで達している。また、「労務」についても従業員規模との相関関係がみられる。

 

表4 経営指導内容 (単位:件、%)

内容

合計

1.経理 64 39.0(35.8)
2.金融 89 54.3(52.4)
3.税務 35 21.3(28.2)
4.労務 31 18.9(15.0)
5.経営 60 36.6(42.2)
6.取引 4 2.4(3.2)
7.その他 2 1.2(1.6)

回答企業数合計

164 21.2(24.7)
(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )は前年度比率。

 

条件、手続き、限度額に不満

 表5は、県及び市町何の制度融資について現状で良いかどうかを問い、良くない場合には不満な点を3項目以内で選択してもらったものである。
 回答企業中で「現状で良くない」とする企業は26.0%で、前回調査とはぼ同じ割合となった。不満な点で多いのは、「融資条件が厳しい」が43.3%で最も多く、次いで「手続きがわずらわしい」が39.3%、「1件あたりの貸付限度が低い」が38.3%と1〜3位の順位が前回調査と入れ替わった。以下「金利が高い」25.4%、「貸付期間が短い」18.4%の順となっている。
 全体的には制度融資についての評価は高いものの、貸付限度額、融資条件、手続きなどに依然として厳しい評価が多い。これらは制度内容を周知させるとともに、今後の課題といえる。
 

表5 現状からみた制度融資への評価 (単位:件、%)
理   由 合計
1.1件あたりの貸付限度が低い 77 38.3(47.8)
2.金利が高い 51 25.4(24.2)
3.融資条件が厳しい 87 43.3(41.1)
4.信用保証制度が不備 18 9.0(9.2)
5.貸付期間が短い 37 18.4(19.8)
6.手続きがわずらわしい 79 39.3(37.2)
7.その他 15 7.5(5.8)

回答企業数合計

201 26.0(27.3)

(注)重複回答のため合計は100%を超える。( )は前年度比率。

 

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